メッシが抱くアルゼンチン代表への怒り=守備的な戦い方を繰り返すサベーラ監督

繰り返される失敗への序曲

スーペルクラシコ・デ・ラス・アメリカスのホームでの一戦も、第一戦と同様に守備的な戦い方をすると明言したサベージャ監督 【写真:アフロ】

 若くしてバルセロナへ移住したため、アルゼンチンリーグでのプレー経験がなく、代表ではバルセロナと同様の輝かしいプレーを見せられずにいたメッシは、母国のファンが自身に対して抱き続けてきた不信感をぬぐい去るという困難な挑戦に打ち勝った。

 ようやく母国のアイドルと認められ、人々と和解し、監督からはキャプテンを任されるようになった。そしてガブリエル・バティストゥータと並び、代表の年間最多得点記録の更新まであと1ゴールと迫ったところで、彼は気づいてしまった。ボールポゼッションの質を高め、ディフェンスラインから攻撃を組み立てられるようにならなければ、ディエゴ・マラドーナやセルヒオ・バティスタの指揮下で経験した失敗が再び繰り返されるかもしれないことを。

 サウジアラビアのようなチームがアルゼンチンに対してあれだけ長い間ボールを支配し、5回ものゴールチャンスを作り出すなんて信じがたいことだ。もはや14年は目と鼻の先であり、W杯の開幕は刻一刻と迫っているにもかかわらず、未解決の課題が山積みであることをこの試合は示したのである。

 それだけに、今週水曜に国内組同士で挑むブラジルとの定期戦「スーペルクラシコ・デ・ラス・アメリカス」の第2戦を前にしたサベーラの姿勢は理解しがたいものだった。

ブラジルへの過剰な恐れ

 1−2で敗れたブラジルホームの第1戦では、アルゼンチンはゴール前に人壁を築いて失点を防ぐことだけに徹し続けた。現在のブラジルリーグはアルゼンチンリーグのレベルをはるかに上回るため、守りを固めたうえでチャンスがあれば攻撃を仕掛けるほかに勝機はない。サベーラはそう弁解するとともに、ブエノスアイレスのボンボネーラで迎えるホームの第2戦でも同様の戦い方を繰り返すと明言したのである。

 サウジアラビアとの試合中、アルゼンチンのテレビ中継では「ブラジルと戦うアルゼンチンをスタジアムで応援しよう」との宣伝が繰り返されていた。

 攻撃性と美しいプレーにあふれた豊かな歴史を持つアルゼンチンが、ブラジル相手にボールを追走し続ける試合を見に行けだって? あまり魅力的な試合ではなさそうだ。

 ブラジルのホームだったにもかかわらず、第1戦では両チームのフットボールに大きな差は感じられなかった。むしろアルゼンチンが攻めに出ていたら結果が変わっていた可能性すらあったくらいだ。なのになぜ、そこまで過剰にブラジルを恐れる必要があるのだろうか。

 ゆえにメッシは、怒りを抱えている。

 現状メッシの怒りを鎮める方法はただ1つ、バルセロナしかない。来年2月、元チームメートのズラタン・イブラヒモビッチ擁するスウェーデンとの親善試合までは、バルセロナの美しいフットボールが彼の怒りを鎮めてくれるはずだ。

<了>

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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