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メッシが抱くアルゼンチン代表への怒り
守備的な戦い方に徹するサベーラ監督

ボールポゼッションに適した人材の不足

アルゼンチン代表でのシステムに怒りをあらわにするメッシ(中央下)
アルゼンチン代表でのシステムに怒りをあらわにするメッシ(中央下)【写真:ロイター/アフロ】

 11月14日にリヤドで行われたサウジアラビアとの親善試合を予想外のスコアレスドローで終えた後、リオネル・メッシは「今日の試合には怒りを感じている」と言って憤りをあらわにした。


 ワールドカップ(W杯)本大会出場へ向けて順調に歩みを進めている時は1、2試合の低調なパフォーマンスに対して寛容になり、紙面やニュースでは形だけの批判が行われる。そんな傾向があるアルゼンチンのメディアは2012年のアルゼンチン代表について、強豪相手にはハイレベルなプレーを見せる一方、ボールポゼッションが求められる格下相手との試合になると一転して機能不全に陥ってしまう奇妙な1年だったと総括していた。


 このコラムではもう何度も書いてきたことだが、アルゼンチンには世界最高の選手であるメッシだけでなく、アンヘル・ディ・マリアやゴンサロ・イグアイン、セルヒオ・アグエロらトップクラスのアタッカーがそろっている。加えてエセキエル・ラベッシ、カルロス・テベス、ロドリゴ・パラシオ、フアン・マヌエル・マルティネス、フランコ・ディ・サントらがベンチ要員や選外となるほど豪華な攻撃陣を擁しているにもかかわらず、なぜかボールポゼッションに適した人材は常に不足し続けている。


 アルゼンチンが抱える問題はマイボール時のパスワークに限らず、いかに相手からボールを奪うかにもおよんでいる。バルセロナ時代にメッシをトップチームにデビューさせた監督であり、当時のプレー哲学を今も貫いているフランク・ライカールト率いるサウジアラビアとの一戦では、その問題がもろに露呈することになった。

アルゼンチンでの“バランス”の意味

 スター選手などいない戦力の限られたチームながら、サウジアラビアはよく整備された戦術の下で意欲的なプレーを見せた。対照的に、アルゼンチンの選手たちはアレハンドロ・サベーラ監督が描いたシステムを過剰に意識しているようだった。


 選手時代のサベーラは1970〜80年代にかけて活躍した非常にクリエイティブな選手だったが、現在は前線に並べた4人の怪物アタッカーに攻撃のすべてを任せ、あとは守備のことばかり心配する監督となってしまった。彼がよく口にする「バランス」という言葉は、アルゼンチンでは自陣のゴールを守ることばかり考えている人間しか使わない。守備的に戦いすぎるチームに対し、「もっと攻めなければいけない」という意味で「バランス」を口にする監督などアルゼンチンではお目にかかった試しがない。


 ゆえにメッシは、怒りを抱えてリヤドを後にした。公に口に出してはいないものの、彼はこの試合で生じた問題の原因をよく理解している。ボリビア相手にホームで引き分け、史上初めてベネズエラに敗れた14年W杯・ブラジル大会の南米予選の2試合でも同様の問題に苦しんだ経験があるからだ。

セルヒオ・レビンスキー/Sergio Levinsky
セルヒオ・レビンスキー/Sergio Levinsky

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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