若きサムライが見せた堂々たる初陣=山本ジャパン、キューバとの第1戦に勝利

田尻耕太郎

山本ジャパン完封発進もスタンドは……

山本ジャパンは初陣を完封勝利で飾るものの、メンバーが代表経験の少ない若手主体なこともあり、ヤフードームには空席も目立った 【写真は共同】

 1万7468人。
 空席が目立つヤフードームのスタンド。今季、同球場でのソフトバンクの主催試合平均観客数が3万4596人(68試合)だったことを考えれば、見事な完封発進を飾った新生侍ジャパンのきらめきとの対比はあまりに寂しいものだった。

 子どもたちは正直だ。
 三塁側スタンドには、それぞれのチームユニホームに身を包んだ野球少年の団体がかなり多く訪れていた。試合前に行われた開会セレモニー。メンバー紹介で巨人の主力の長野久義や坂本勇人、もしくは地元ソフトバンクの松田宣浩や本多雄一あたりがコールされれば甲高い声援と大きな拍手が送られるのだが、一部……いや3分の1ほどの選手にはまるで無反応なのだ。

 平均26.1歳の日本代表。加えて、この日、山本浩二監督がスタメンに起用した全員が、WBCや五輪の経験もないプロ入り後初めて代表に招集されたメンバーだった。メジャーリーガーはもちろん過去の代表に名を連ねた主力もいない。今代表の核である阿部慎之助(巨人)もコンディション面を考慮して試合出場は見送った。まだ本大会ではない。その準備のための強化試合なのだ。だが、そんな理由は純粋すぎる彼らには通用しないのである。

「ほぼベスト」のキューバに力勝負で立ち向かった

 しかし、若きサムライたちのプレーは、じつに堂々たるものだった。
 初回の攻撃、2番の大島洋平(中日)が一塁に立つ。今季セ・リーグの盗塁王は次打者の初球でスチールを成功させてみせた。侍ジャパンの先制点は2回、25歳の「若獅子」炭谷銀仁朗(埼玉西武)の本塁打。パ・リーグ首位打者の角中勝也(ロッテ)はセンター右へのヒットで相手の隙を突き二塁打とする好走塁で2点目のきっかけを作った。長野と坂本の巨人勢はマルチ安打だ。

 投手陣は7人で完封リレー。「キューバは各打者が思い切ったスイングをしてくる」(山本監督)、「振る力は世界でもトップクラス」(井端弘和・中日)と日本側は警戒を強めて試合に臨んだ。また、キューバのビクトル・メサ監督は「今回のメンバーの90パーセントほどが、3月のWBC本大会にも出場することになるだろう。投手を4人ほど本国に残してきた」と語っており、ほぼベストメンバーであることが予想される。成績を調べても、スタメン9人全員が直近のキューバ国内リーグで打率3割以上をマーク。うち6人が2ケタ本塁打を放つまさしくパワーヒッターぞろいだった。

 だが、サムライ投手陣はその上をいったのだ。先発の大隣憲司(ソフトバンク)は2回をパーフェクト3奪三振。しかも投じた22球のうち14球が直球というピッチングだった。相手4番A・デスパイネ(リーグ成績:打率326、36本塁打、105打点)にもオール直球勝負を挑み、4球で空振り三振に仕留めた。この日の最速は140キロ。それでも、インコースを強気に攻めた結果、キューバ打線は手も足も出なかった。
 5回途中から4番手で登板した21歳右腕の今村猛(広島)も、2死一、二塁のピンチながら145キロの直球で真っ向勝負を挑みライトファウルフライに打ち取った。今村も2イニングをパーフェクトに抑え、勝利投手となった。

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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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