明確になったオランダとドイツの力の差=“Cチーム”にも及ばない再建中の“Bチーム”
世界における現在位置を確認した親善試合
フンテラールに代わりファン・ペルシ不在のCFに抜てきされたカイト。中盤での数的優位には貢献したがその評価はいかに。 【VI-Images via Getty Images】
ユーロにおけるオランダ崩壊の始まりは、今からちょうど1年前、ハンブルクでドイツ代表に0−3と大敗した試合にあったのかもしれない。ユーロ予選の最後、スウェーデンに取りこぼしたものの、それまでのオランダはハイレベルな試合を続けていた。しかし、エジル、ケディラ、ミュラーのモダンな中盤にオランダは圧倒され、ぐうの音も出ないほどの完敗を喫したのだ。スコア以上に内容の差はオランダにとってショックだった。その後、ユーロでもオランダはドイツに1−2と敗れた。
「1年間で同じ相手に3連敗したくない」。その思いがオランダには強かった。一方、ドイツもW杯予選でスウェーデンに4点のリードを守りきれず4−4で引き分けたばかり。オランダが守備を固め、ドイツが無理せずボールを回す下地はあったのだ。
またシーズン最中の水曜日に行われた親善試合とあって、両チームの選手たちのコンディションは悪く、負傷辞退者が相次いだ。オランダはファン・ペルシ、スナイデル、レンス、ストロートマンを欠く“Bチーム”と呼ばれたのに対し、ドイツはケディラ、エジル、シュバインシュタイガー、クローゼらを欠いた“Cチーム”と呼ばれた。
凡戦だが貴重な学びの場
後半、オランダが先に選手交代を繰り返したことによって、ドイツの選手に疲労が出た。そこで75分からオランダが試合の流れをつかんだが、ビッグチャンスはDFヤンマートのシュートのみ。やがてドイツも選手交代を繰り返すことで試合をこう着状態に戻した。
80分には観客が席を立ち始めた試合。結果はスコアレスドローだった。それでもオランダにとって、ドイツのCチームはオランダのBチームよりレベルが上だと認識できた、貴重な学びの場だった。何せ、彼らは先発メンバーのうち10人が今季のチャンピオンズリーグに出場しているのである。オランダはわずか5人だ。お互いチームの完成度が低かった中でも、選手層の差、個々の力の差が見て取れた試合だった。
代表でも“エル・ハムダウイシステム”を採用?
「この試合、ドイツが試合を支配し、われわれが自陣に引く流れになるのは読めていた」とファン・ハールは言う。さらに、「オランダはドイツのペナルティーエリアから遠い場所でプレーすることになった。フンテラールはペナルティーエリアの中で力を発揮するタイプ。カイトはもっと動くタイプ。この試合ではカイトを起用するのが論理的な判断。彼には『下がることで中盤の数的優位を作れ』と指示し、それを良く守ってくれたが、あまりにも自分本来のポジションから下がり過ぎたことで、肝心な時に相手ゴール前にいなかった」と説明を続けた。
残念ながら、今のオランダは攻撃的で魅力的なサッカーのお株をドイツに奪われた。その現実をファン・ハールは理解しているのだろう。彼は「全体のラインを下げることによって、相手陣内のスペースを意図して作った。わたしはうちのスピードに優れた選手(スハーケン、ロベン、後半からエリア)を生かそうとしたのだ」と語った。
アヤックスフィロソフィーで知られるファン・ハールだが、実はAZを悲願のリーグ優勝に導いた時、当時のエース、エル・ハムダウイのスピードと得点力を生かすため、彼へのスペースをあらかじめ作っておくカウンター戦術を採用していた。
凡戦を見慣れている僕でも飽きるほどの凡戦だったオランダ対ドイツの0−0。しかし、ファン・ハールがオランダ代表でも“エル・ハムダウイシステム”を採用しようとしているのなら、後から価値の出る試合になるかもしれない。
この日のファン・ハールはGKフェルメール、MFファン・ヒンケルをデビューさせた。6試合で実に10人目の代表デビュー。こうしてオランダは2012年のスケジュールを終えた。
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