香川真司が抜けたドルトムントの現状=CLでの躍進とリーグ戦不調の真実

中野吉之伴

ブンデスリーガで苦しむ要因とは?

香川が抜けたドルトムントのトップ下を務めるロイス 【Bongarts/Getty Images】

 ブンデスリーガ2連覇、昨シーズンはドイツカップとの2冠を果たしたドルトムントで欠かせない存在だった香川真司はマンチェスター・ユナイテッドへと移籍していった。すでにメンヘングラッドバッハから昨季のMVPであるドイツ代表マルコ・ロイスを獲得していたドルトムントは香川離脱の後、選手をさらに補強することなく、香川の定位置だったトップ下のポジションにロイスをはめ込む形で今シーズンに臨むことになった。

 ロイスだけではなく、ドイツの至宝と呼ばれるマリオ・ゲッツェもいる。彼らのコンビが有機的にかみ合えば、とドルトムントファンの期待も大きかった。ほかのメンバーを見渡しても将来性の高い若手から中堅・ベテランと今シーズンもタイトルを狙えるバランスのとれた陣容はそろっている。事実UEFAチャンピオンズリーグ(CL)のグループリーグではレアル・マドリー、マンチェスター・シティ、アヤックスとの「死の組」に属しながらここまで3試合を2勝1分けの首位と順調に勝ち点を稼げている。その一方でブンデスリーガでは現在4位で首位バイエルンと勝ち点11差を付けられ、苦しんでいる。その要因はどこにあるのだろうか。

香川と異なるタイプのトップ下“ロイス”

 まず、ロイスありきのサッカーにチームがまだ完全に慣れていないことが挙げられる。トップ下の前任者である香川は相手守備ラインと中盤のスペースにうまく入り込み、そこでボールを受けて攻撃の起点となることがストロングポイントとして挙げられている。また、彼の良さはそれだけではなく、時に中盤の底までボールをもらいに下がり、そこでリズムを一回作ってから前に出ていく動きもできることだ。特に相手が守備を固めているときには一度そこでリズムを作ることで相手守備陣をずらすことができるし、後ろの選手にしたらそこで一度ボールを預けられるため、いたずらにロングボールを蹴らなくて済む。

 一方のロイスは、よりペナルティーエリア付近で生きる選手。ボールを保持した時の怖さは香川に勝るとも劣らないし、単独でのドリブルからのシュートでは香川よりも上だといえる。しかしビルドアップへの絡みはそこまでうまくなく、チームとしてもロイスにいいタイミングでボールを預けることができていない。早い段階でトップのロベルト・レバンドフスキにボールを預けて、そこから落として展開というのは昨シーズンまでと変わらないドルトムントのやり方だが、今シーズンはビルドアップからのパスの選択肢がレバンドフスキに偏りすぎている傾向がある。そのため相手チームはそこを集中的に狙うことができる。

 ロイスがもっとビルドアップに絡むか、あるいはダブルボランチがよりボールを前に運ぶようにするようにして相手が守備の的を絞り切れないようにしないと攻撃に幅が出てこない。期待されていたロイスとゲッツェのコンビもまだはまっていない。お互い自分主体の仕掛けをイメージしすぎているために生かし・生かされる関係が十二分にでき上がっていないのだ。

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著者プロフィール

1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで経験を積みながら、2009年7月にドイツサッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU15チームで研修を積み、016/17シーズンからドイツU15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。

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