西武の新1番・浅村栄斗がこだわる第1打席

中島大輔

浅村が臨むトップバッターとして初のCS。1打席目でチームに流れを呼び込むことができるか 【写真は共同】

 高卒4年目の今季、埼玉西武ライオンズの浅村栄斗には秘めた思いがあった。

「1番を打ちたい」――。

 チャンスは思いがけぬ事態から巡ってきた。リードオフマンとしてチームをけん引してきた栗山巧が8月21日のソフトバンク戦で死球を受け、左尺骨骨折で戦線離脱。代役を任されたエステバン・ヘルマンが機能せず、8月30日の日本ハム戦から浅村が1番に据えられた。

「高校時代は1番だったし、慣れたポジションだと思う」
 渡辺久信監督の期待を受け、大阪桐蔭高時代と同じ1番に入った浅村は“水を得た魚”のように持ち味を発揮していく。9月13日に行われたオリックス戦までの13試合で、56打数19安打、この間の打率は3割3分9厘。特に光ったのが第1打席で、13打数5安打の好成績だった。

「自分はトップで立つバッター。1打席目を、チームに良い影響を与えられるような打席にしたい」

下半身の粘りで変化球に合わせる

 浅村の持ち味は積極性だ。ファーストストライクから、微塵のちゅうちょも見せずにフルスイングする。基本はストレート待ちだが、変化球でも振り抜く。その裏にあるのは、こんな考えだ。
「変化球だと1テンポ、どこかのタイミングで体が反応して打ちにいけます。まずは振りにいかないと、真っすぐのタイミングで打ちにいって、変化球に対応することもできない」

 基本はストレートを待ちながら、変化球がきた場合は下半身の粘りでタイミングを合わせ、思い切り振る。「高校時代から変化球を打つ方が得意だった」という浅村は、自然とこの打ち方を身につけた。
 だが裏を返せば、下半身の粘りがなければ変化球で崩される。ボールゾーンに外れる球に手を出し、ストライクの見極めをできなくなるのが調子を落とす傾向だった。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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