日本のテニスが忘れていた興奮を呼び覚ます錦織圭の4強進出=楽天オープンテニス第5日

WOWOW

日本の男子選手で初めて8強の壁を突破

男子の日本人選手として初めてベスト4に進出した錦織。またひとつ、日本テニスの歴史を塗り替えた 【写真は共同】

 男子テニスの楽天ジャパン・オープン(東京・有明テニスの森公園)、大会5日目の金曜日には準々決勝が戦われ、トーナメント表の上から順に、アンディ・マレー(英国)、マイロス・ラオニッチ(カナダ)、マルコス・バグダティス(キプロス)、そして錦織圭が4強に勝ち残った。

 4試合それぞれ激戦で、選手たちの持つ多彩な技術、あるいはテニスが見せられるさまざまなエンターテインメント性を堪能できた一日と言っていいが、ハイライトはやはり錦織圭の4強進出に尽きるだろう。

 錦織の大会はまだ準決勝以降へと続いており、ここで過度の称賛は避けたいのだが、楽天オープン(=ジャパン・オープン)が1973年に公式ツアー化して以来、日本の男子選手が8強の壁を破ったのは錦織が初めてで、錦織はまたひとつ、日本のテニスの歴史を塗り替えたことになる。

 錦織の準々決勝の相手は、現在世界6位で、大会第2シードのトマシュ・ベルディヒ(チェコ)。先の全米オープン準々決勝ではあのロジャー・フェデラー(スイス)を下した世界的な強豪だ。196センチの大きな体格を生かしたパワフルなプレーが持ち味なのだが、最も恐ろしいところは強打を正確にコントロールする能力だ。野球で言えば、160キロを超える豪速球を、ピンポイントに投げ分けられる投手をイメージすれば分かりやすいか。だが、それは強い力を完全に制御することで実現できる技術であり、その見た目の豪快さとは裏腹に、彼のテニスは非常に繊細な技術を突き詰めることで成り立っていると言っていい。ボールを打つということにかけては、当代屈指の能力を持つ選手がベルディヒなのだ。

 だが、テニスが面白いのは、対戦競技であるということ。どちらかの選手のパワーやスピード、あるいは技術が圧倒的に上だったとしても、いざ試合となると必ず相性の良しあしが存在し、その「性能」ではかなわないはずの選手が、上の選手を倒したりすることがある。

 錦織とベルディヒのこの試合の前までの対戦成績は、2勝1敗で錦織がリードする関係だった。直近の対戦は今年4月のマスターズ・シリーズ・モンテカルロ(ATP1000)でのことで、サーフェスはクレイ。球足が遅い分だけ、大きなパワーが必要となる舞台での対決では、ベルディヒが勝っていたが、これもフルセットで接戦の末の辛勝。よりスピードが求められるハードコートでは錦織が2勝していた。

錦織の完全な勝利、ベルディヒは完敗認める

 今大会の準々決勝を結果から言えば、錦織が7−5、6−4のストレート勝ちで、試合時間は1時間58分。スコア上はある程度、競った展開に見えるかもしれないが、実際には錦織のほぼ完全な勝利だった。

「彼との試合は、今日だけじゃなく、いつもこんな感じだ。多分、僕のプレーが彼のスタイルに合っているんだろうね」。試合後のベルディヒはこうコメントし、「今日の僕はこの大会では一番いいプレーをしたはずだったのに、結果は付いてこなかった」と完敗を認めた。

 ベルディヒの調子は確かに良かったはずだった。第1セットで錦織から奪ったサービスエースは5本。スピードも200キロを軽く超え、210キロ台後半をコンスタントに記録していたし、高い打点からフラットに打ち込まれるストロークは、鋭く深く、そして正確にコートをえぐっていた。

 だが、錦織はボールへの反応を上げ、スピードに対してスピードで対応した。普通であればウイナー級のベルディヒのフォアハンドを、錦織は鋭い軌道のボールにしてたたき返し、さらに左右に振り回した。ベルディヒも必死で食らいついてラリーを成立させたが、オフバランスで強引なショットを強いられるベルディヒと、自分からあえてタイミングを早めて打ちに行っていた錦織とでは、コントロールの正確性や、コースの選択の主導権という面で大きな差があった。

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