浸透した吉武サッカー、日本が見せた確かな成長=AFC U−16選手権 グループリーグ総括
大会を通じて着実に成長している
そして北朝鮮戦ではこの3人が勝利の立役者となった。「裏に抜け出して点を取るのが僕の仕事」と言い切る中村と、三好が果敢にDFラインの裏に抜け、ここにMF水谷拓磨(清水ユース)、杉本、青山景昌(名古屋U18)らが高い位置でポゼッションをしながら、相手のギャップを巧みに突いていく。
立ち上りから試合を支配すると、14分に右サイドでのパス回しから、右サイドバック石田峻真(ジュビロ磐田U−18)のオーバーラップを引き出し、石田のクロスを、中央に飛び込んだ中村が、GKより一瞬早く触れてゴールに押し込んだ。吉武サッカーの特徴が出たゴールで、チームは勢いに乗った。
守備では、ボールを奪われてからのリアクションが素晴らしかった。全体が一気に守備に切り替わり、ボールサイドには複数がプレスを仕掛ける。その際、DFラインが下がってブロックを作る。そしてボールを奪ったら、一気にそのブロックを開放して、ビルドアップしていく。この組織的な攻守の切り替えに北朝鮮はなすすべがなかった。時折、ミス絡みでヒヤリとするシーンはあったが、49分にはテンポの良いパス回しから、中村のラストパスを受けた杉本が、ドリブルから左足の強烈なシュートを突き刺した。
そして、82分には交代出場のFW小川紘生(浦和ユース)が、相手のミスをすかさず突いて3点目を奪った。負けたら終わりとなる重要な一戦を、3−0の勝利で飾れたことは、吉武サッカーが浸透し、彼らがこのグループリーグを通じて着実に成長していることを表している。
大一番を制することができるか
次の準々決勝のシリア戦は、来年にUAEで開催されるU−17ワールドカップ出場権を懸けた重要な一戦になる。シリアは組織力はないが、北朝鮮、サウジアラビアと同様に一発があるチームだ。この3試合で得た課題をいかに修正して、この大一番を制することができるか。そして、北朝鮮戦で見せた確かな成長をこの試合でも見せてほしい。
<了>