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浸透した吉武サッカー、日本が見せた確かな成長
AFC U−16選手権 グループリーグ総括

最低限のノルマは達成

収穫と課題が両方出たサウジアラビア戦では、三好(左)が攻撃を活性化させた
収穫と課題が両方出たサウジアラビア戦では、三好(左)が攻撃を活性化させた【写真:ZUMA Press/アフロ】

「死のグループ」。まさにその一言がぴったりだった。サウジアラビア、韓国、北朝鮮と、日本が属するグループCは、大会前から最大の激戦区になっているのは一目瞭然(りょうぜん)だった。実際、イランの地にやってきて、ほぼすべてのグループの試合を見たが、やはりその中でもこのグループのレベルはず抜けていた。


 一番飛び抜けていたのは、残念ながら日本ではなく韓国だった。韓国は中盤では丁寧につなぎ、ゴール前では多少雑でも一気に攻めきる力を持っていた。特にセカンドボールへの反応、ボールを拾ってからの仕掛けの圧力はすさまじい。そして、何よりエースストライカーのファン・フィチャンの存在は、他のアジアのチームと見比べても群を抜いていた。


 日本は、特定のタレントに依存するのではなく、チームで戦うすべを持っている。この戦術がどこまで力を発揮するかが、今大会の一つのポイントだった。


 グループリーグ3戦を終えて2勝1敗。韓国に次ぎ、グループCを2位通過した。結果に関しては、決勝トーナメント進出という最低限のノルマを達成したこともあり、十分に評価できるだろう。

収穫と課題が出たサウジアラビア戦

 日本は、グループリーグを通じて課題と収穫の両方を得た。初戦のサウジアラビア戦では、選手たちは明らかに緊張しており、動きが硬く、思うようにボールが足についていなかった。PASスタジアムのピッチは固く、バウンドが大きくなるなど、それに順応するのに手間取っていた部分もあった。


 サウジアラビアの戦術は、ロングボールを蹴り込んで、前線に配置した4人のドリブルで攻め込むという、単純明快なものであった。日本はその攻撃に対し、DFが寄せきれず、ドリブルで深い位置まで攻め込まれるなど、対応に苦しんだ。また、それ以外にも中盤でのパスミスからカウンターを受け、ひやりとする場面も作られている。


 だが、攻撃面は守備面以上に課題が残った。前線の形は2人のフロントボランチ(2シャドー)と3トップの形だが、センターFWに入った杉本太郎(帝京大可児)は、前線で張るタイプではなく、動いてボールをもらい、パスを散らすタイプである。杉本は2列目まで下がってボールを受けることが多く、その状態で両ワイドのトップもサイドで待つと、前線に人がいなくなり、さらに裏に抜ける選手もいなくなる。これではパスをつなぐことはできても、相手DFに圧力をかけることはできない。


 そうした状況で、右のワイドトップに入っていた北川航也(清水ユース)は、「中に人がいなかったので、自分が入ることで、パスを引き出すだけでなく、サイドバックの佐々木渉(FC東京U−18)に高い位置を取らせたかった」と、チームの問題点にいち早く気づき、ポジションを相手のセンターバック付近に移したことでボールが回り出した。


 さらに北川は、「相手のサイドバックが自分のところにマークについてきたので、2列目からの動きの方が外せると判断した」と話してくれた。この北川の動きによって、相手のサイドバックが中に絞り、サイドに大きなスペースが生まれたことで、右サイドバックの佐々木が効果的な攻撃参加ができるようになり、サウジアラビアのDFラインが崩れていった。


 先制点はまさにこれらの動きがうまくはまったことで生まれた。「北川が中に入ったので、僕がサイドを上がればボールが回る。それができたと思います。なかなか攻撃参加ができなかった中、1回目の攻撃参加で先制点に絡めたのはよかったと思います」と佐々木が語ったように、前半終了間際の45分に、左からのクロスをフリーで受けた佐々木が豪快にゴールに突き刺さした。


 52分にMF三好康児(川崎フロンターレU−18)が入ると、「裏に抜ける選手がいることが大事だと思っていた。相手は足元に来たらがっつり行くのが得意な中、まだみんな足元、足元になっていたので、1人か2人が(裏に)抜けて、ラインを下げさせて空いたスペースを使うようにしないと、崩れないと思った」と、効果的な仕掛けと、裏へのフリーランニングを仕掛けたことで攻撃がさらに活性化した。


 2−0で勝利した試合で得た収穫は北川と佐々木の連係と、三好の存在だ。課題としては、ボールを動かしているだけでは厳しく、どこかのタイミングでこうした変化が必要なことをこの試合が証明した。第2戦の韓国戦は前回書いたコラム(9月26日掲載)でレポートしたため割愛するが、この試合もDFラインの裏を抜けるような動きをした選手は少なかった。

安藤隆人
安藤隆人

大学卒業後、5年半勤めた銀行を退職して単身上京し、フリーサッカージャーナリストに転身した異色の経歴を持つ。ユース年代に情熱を注ぎ、日本全国、世界各国を旅し、ユース年代の発展に注力する。2012年1月にこれまでのサッカージャーナリスト人生の一つの集大成と言える、『走り続ける才能たち 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)を出版。筆者自身のサッカー人生からスタートし、銀行員時代に夢と現実のはざまに苦しみながらも、そこで出会った高校1年生の本田圭佑、岡崎慎司、香川真司ら才能たちの取材、会話を通じて夢を現実に変えていく過程を書き上げた。13年12月には実話を集めた『高校サッカー 心揺さぶる11の物語』(カンゼン)を発刊。ほかにも『高校サッカー聖地物語 僕らが熱くなれる場所』(講談社)、があり、雑誌では『Number』、サッカー専門誌などに寄稿。昨年まで1年間、週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!SHOOT JUMP!』を連載した。

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