米MMAの華が初主演、女性アクション映画の魅力=「帰ってきたシネマ地獄拳」第2回

しべ超二

美人MMAファイターとして人気のジーナ・カラーノが銀幕デビュー 【(C)2011 Five Continents Imports.LLC. All rights reserved】

 映画コラム「帰ってきたシネマ地獄拳」第2回は、女子MMAを全米に知らしめる役割を果たしたジーナ・カラーノがスパイに扮した映画デビュー作『エージェント・マロリー』と、『アバター』のヒロイン、ゾーイ・サルダナが殺し屋を演じた『コロンビアーナ』の2本立て。スパイvs.キラー、タフなジーナとしなやかなサルダナ、味わい異なる女性アクション映画のそれぞれの魅力とは。

アンジー、ミラに続くアクションスター誕生の予感

総合格闘家らしい関節技も披露 【(C)2011 Five Continents Imports.LLC. All rights reserved】

 リングあるいは金網から銀幕へ進出し成功を収めた例というと、2000年以降ではWWEのザ・ロックことドゥエイン・ジョンソン、MMAからは『エクスペンダブルズ』シリーズのランディ・クートゥア、『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』のクイントン・“ランペイジ”・ジャクソンらが思い浮かぶところか。
 そして今回、アカデミー監督のスティーヴン・ソダーバーグ、同じくオスカー俳優のマイケル・ダグラス、さらにユアン・マクレガー、アントニオ・バンデラスといった名立たるキャスト・スタッフが脇を固める『エージェント・マロリー』に抜擢も抜擢、大抜擢を受けたのが米MMA界の華ジーナ・カラーノだ。

 本作でジーナは冒頭からオモプラッタや腕十字といった、よく見知ったグラウンド技術を使った格闘シーンを展開。ムエタイがベースで打撃よりのファイターであるジーナだが、のっけから寝技を見せ、“総合格闘家”という自身の出自を見せつける。パンチと蹴りがほとんどで、キックボクシング的攻防が大概である従来の格闘シーンに対し、一味違うところをアピールしているかにも思われる。
 ソダーバーグが好きだという初期007シリーズを志した本作は、爆破シーンを連発してファンタジー化してしまう愚を犯さず、リアリティを追及している。
 そのため格闘シーンにも“生身感”があり、凄腕エージェントのマロリーも決して無敵の存在ではなく、体格・体力の差がある男を相手に苦戦を強いられる。すんなり一蹴、やっつけるという訳にはいかない。

 MMAファイター・ジーナゆえのサービスなのか、相手に反撃の余地(=バスターなど)がある三角絞めやフロントチョークを多用するためかえって窮地に陥り、「寝技はいいけど上を取るかバックにつかないと危ないよ!」などと、こちらに気を揉ませてハラハラさせたりもする。
 だが一方で「生き方が、芝居に出る」と高倉健も語ったように(NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」)、MMAファイターというジーナの出自が映画と格闘シーンに説得力を持たせているのも事実だ。

 女性アクションといえばアンジェリーナ・ジョリーやミラ・ジョヴォヴィッチらが浮かぶが現在は確たる存在が不在であり、空きのあるこのポジションにジーナは有力候補として躍り出たと言えるかもしれない。
 マット界では輪島大士、北尾光司、小川直也の例を見ても他分野からの転向組を快く思わない風潮があるが、ジーナは次作に『ワイルド・スピード』第6作への出演が伝えられ、『エクスペンダブルズ』第3作への出演も噂されるなど、映画界で好意的に受け入れられている様子。金網発の女性ファイターが銀幕にも大輪の花を咲かすことができるか、まずは今後のお手並みを拝見、といったところだろうか。

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著者プロフィール

映画ライター。ペンネームは『シベリア超特急2』に由来し、生前マイク水野監督に「どんどんやってください」と認可されたため一応公認。松濤館空手8級。

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