清武と乾の「ミニ香川対決」が示した現状=ドイツで交り合った元C大阪コンビ

了戒美子

ニュルンベルクのヒーローとなった清武

試合後にユニフォーム交換を行う清武(右)と乾。二人の対決は大きな話題となった 【Bongarts/Getty Images】

 ドイツ・ブンデスリーガの第4節、ニュルンベルク対フランクフルト戦。試合終了直後、テレビ中継局がそのままピッチ上で行うインタビューがある。この日はまずニュルンベルクの清武弘嗣が呼ばれた。ホームで1−2と敗れはしたものの、またも彼のFKに味方が合わせた形で清武はアシストを記録。彼は今季ニュルンベルクの全ゴールに何らかの形で関わっている、ちょっとしたヒーローなのだ。通訳を介し、インタビューは始まった。「負けて悔しい。うまくゲームに入れなかった。これが自分たちの現状だと思う」
 話しているうちにフランクフルトの乾貴士が呼ばれてやってくる。この日の2点目を挙げている乾は上機嫌だ。清武の表情も和らぐ。
「うれしいです」

 続けて、質問は乾に飛ぶ。「清武は新しい香川(真司)と呼ばれているが、その点について乾はどう思うか」という問いに対し、
「キヨはキヨ、シンジはシンジ」
 乾は笑いながらそう答えた。後輩を思いやる気持ちが見える。

 すると今度は、清武に質問が向く。「乾が自分よりも優れているところは?」。清武は「ゴールへの姿勢。実際に今日はゴールを決めているし。1歳年上だし」と、ちょっとオチのようなものをつけ、2人だけに分かる何かに笑い合う。掛け合いとまではいかないが、実際に友人同士であることを示す様子を放送することには成功していた。

香川という2人を結ぶ共通点

 試合前から、清武対乾の日本人対決はこの試合の大きなトピックだった。例えば『ビルト』紙で見る試合前のプレビュー記事は「ミニ香川の対決」と、清武と乾の日本人対決をクローズアップした。2人がセレッソ大阪時代からの友人であり、共に高速ドリブルを得意とし、チーム最低身長であることを、データ部分を別建てにしてまで記事化して紹介した。筆者がニュルンベルクでタクシーに乗れば「キミも大阪から来たのか?」とドライバーから問いかけられるといった調子。日本メディアが一方的に盛り上がっているというわけではなく、できる限り冷静に判断してもそれなりの注目度だった。

 もちろん大前提として両チームが第3節までの時点で好調だったということがある。中心選手として活躍し共に第3節では得点も挙げている。そして、本人の思惑とは関係なく、彼らの共通点が、香川というドイツ人にとって分かりやすい人物にあるため、話題になりやすいのだ。件のビルト紙記事では「(両者にとって)香川の夢のようなキャリアへ向うステップだ」と結んでいる。つまり、彼ら2人はあくまで香川をフォローする選手だというまとめ方だった。

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著者プロフィール

2004年、ライターとして本格的に活動開始。Jリーグだけでなく、育成年代から日本代表まで幅広く取材。09年はU−20ワールドカップに日本代表が出場できないため、連続取材記録が3大会で途絶えそうなのが気がかり。

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