「負けるつもりはない」切磋琢磨するソフトBの2本柱=鷹詞〜たかことば〜

田尻耕太郎

ともに防御率1点台 杉内と和田に代わる2人のエース

11日の楽天戦で15勝目を挙げ、ファンの声援に応える攝津(右) 【写真は共同】

 杉内俊哉と和田毅。
 彼らが去って迎えた今シーズンの福岡ソフトバンクホークスに、日本一になった昨季、2位に17.5差をつけたような圧倒している感はない。だが、それでも9月13日現在、首位までは3ゲーム差の3位。選手たちは「(残り6試合で3.5差をひっくり返した)2010年の逆転優勝の再現をしてリーグ3連覇だ」と血気盛んなのだ。

 好調なチームを支えるのは、意外にも、両左腕に加えて昨季最多勝のホールトンが抜けた投手陣である。チーム防御率2.66はパ・リーグトップ。また、チーム60勝のうち先発投手に56の白星がついており先発陣も安定している。

 それは、ソフトバンク投手陣が「柱」を失わずに戦うことができているからだ。
15勝5敗、防御率1.98の攝津正。
12勝5敗、防御率1.79の大隣憲司。

 とてつもなく大きな穴を埋めた、エース級の活躍を見せる2人の投手。2012年のソフトバンクに誕生したチームの新しい2枚看板である。

「狙って投げるのは四隅だけ」攝津の驚くべき制球力

 攝津は「投手二冠」である。最多勝レースでは2位に3差をつけて独走。勝率.750は北海道日本ハムの吉川光夫と並んでいる。そして、9月11日の東北楽天戦(ヤフードーム)でマークした15勝目は、昨季の14勝を上回る自己最多だった。だが、お立ち台に立った攝津はいつも通りクールそのもの。インタビュアーにタイトルや記録の話を向けられても、少しの間があって「そうですね。まあ、良かったです」とほんの少し口元を緩めるだけだった。

 それが攝津のピッチングスタイルそのものでもある。常に冷静に表情を変えることなく、まるで精密機械のような抜群のコントロールでアウトを重ねていく。

「僕は150キロのボールを投げるピッチャーではないので、ストライクゾーンで勝負はできない」
 バッティングセンターなどでお馴染みの「ストラックアウト」に例えると、9分割したストライクゾーンのうち狙って投げるのは四隅だけ。
「試合で、真ん中めがけて投げることはない。その四隅の中でボール1個分を外すイメージです。横に外すか、下に落とすか。ブルペンでの練習からそれは意識しています」

 だが、今季は与四球が多い。昨季の31から52へと激増している。
「調子が悪い日もあります。それでも、今年は長いイニングを投げて試合をつくることができているので、それで数が多くなってしまったのだと思います」

 エースという言葉には「まだまだ」と反応は鈍いが、先頭に立たなければならない自覚は十分に持っている。夏になり調子が上がってきたのか、8月28日のオリックス戦では無四球完封。先日の楽天戦も無四球だった。
「確かに調子は良い。今は余裕をもって、マウンドに上がれています」
 ただいま8月15日から5戦連続勝利中である。

1/2ページ

著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント