アルゼンチン代表で最高の時を過ごすメッシ=11試合で11ゴールと量産

メッシにとってもはや苦痛ではない

ピッチ内外でリーダーへと成長したメッシ。7日のパラグアイ戦でもFKでゴールを挙げた 【写真:ロイター/アフロ】

 クリスティアーノ・ロナウドの悲しみどころではない。彼には無数のマイクとテレビカメラ、そして数え切れないほどのシャツにサインする作業が待っているのだ。毎度母国に降り立つたび混沌(こんとん)とした状況に身を置くことを知っていながら、いつしかメッシはアルゼンチン代表の一員として帰国することにストレスを感じなくなった。彼が代表チームで幸せに過ごす様子は、ピッチ上のプレーにも見て取れる。

 プライベートな面でもチームの戦術的にも、メッシにとってアルゼンチン代表で過ごす時間はもはや苦痛ではなくなった。アレハンドロ・サベーラ監督が指揮した11試合で11ゴールを挙げているのは偶然ではない。先週金曜日(7日)には、ホームで過去39年間にわたって一度も勝てていなかった難敵パラグアイを迎えたワールドカップ(W杯)・ブラジル大会の南米予選で、苦しみながらも3−1で勝利を手にしている。

いつになく平穏なアルゼンチン代表

 この試合を迎えた時点における両チームの置かれた状況は対照的だった。

 アルゼンチン代表はいつになく平穏な時期を過ごしている。キャリア最高の時を過ごすメッシがピッチ内外でリーダーへと成長し、チームのプレースタイルもメッシの特長を生かすものとなった。ピッチ外で問題となりそうな火種も見当たらない。国内メディアはサベーラがカルロス・テベスを招集すべきか否かという話題をにわかに取り上げ始めたくらいだ。

 新聞各紙はもう彼の名前を呼ぶこともなく、「エル・メホル(ザ・ベスト)が来た」との見出しとともにバルセロナから帰ってきた天才プレーヤーの写真を一面に掲載。テレビ各局はメッシを除くほかの選手の中から各試合のマン・オブ・ザ・マッチを選ぶようになった。ピッチ上の彼をほかの選手と比較することなど不可能だからだ。

 一方、南米予選の最下位に沈むパラグアイは先日フランシスコ・“チキ”・アルセ前監督を解任し、新監督に就任したウルグアイ人のヘラルド・ペルッソとともに1978年W杯・アルゼンチン大会の会場にもなったコルドバのマリオ・ケンペス・スタジアムへやって来た。

 クリエーティブなミッドフィールダーを欠くパラグアイの中盤が構成力に乏しいのは今に始まったことではない。だが当国最高のストライカーであるオスカル・カルドソとネルソン・アエド・バルデスをベンチに座らせ、最前線にロケ・サンタクルス、その後方にアシスト役のジョナタン・ファブロを配置する現在のチームは前線の得点力が著しく低下している。セルヒオ・アグエロは負傷中ながら、メッシ、ゴンサロ・イグアイン、アンヘル・ディ・マリア、エセキエル・ラベッシら豪華アタッカー陣を擁するアルゼンチンに対抗するには、その戦力はあまりにも乏しかった。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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