得意の先行逃げ切りで、ハミルトンが今季3勝目=F1 アロンソは3位に入りチャンピオンに一歩前進

吉田知弘

勝敗を分けた3つのポイント

先行逃げ切りで今季3勝目を挙げたハミルトン(中央)。2位にペレス(左)、3位にはアロンソ(右)が入った 【Getty Images】

 2012年F1世界選手権の第13戦イタリアGP決勝がモンツァ・サーキットで行われ、ルイス・ハミルトン(マクラーレン)が通算20勝目となる今季3勝目を挙げた。前回勝利したハンガリーGP同様にポール・トゥ・ウィンを飾った。

 ハンガリーGPではロータスチームの2台に終始追われる展開となり、最後まで集中力を切らさずに守りきった勝利だったが、今回イタリアGPでは序盤からリードを築いて“独走”でのトップチェッカー。これも前回同様に“勝敗を分けるポイント”をきっちり押さえての勝利だった。そのポイントは以下の3つが挙げられる。

・ポイント1 序盤から逃げられるようにスタートでは必ずトップを死守

 スタートでは好ダッシュを見せた3番手スタートのフェリペ・マッサ(フェラーリ)に横に並びかけられる。しかしモンツァの鋭角な1コーナーで優先権があるイン側ラインを的確に選んだハミルトン。ブレーキングでもギリギリまで我慢したが、マッサを押し出すことなくトップで1コーナーを通過。レース序盤の主導権を握り、序盤からペースを上げて後続を引き離した。

・ポイント2 “予想外の対応”に備えて後半はタイヤを温存

 スタート後の早い段階から勝負をかけたハミルトン。後続に対し12秒のリードを築いて23周したところでピットへ。ここでハードタイヤに交換する。今年ピレリタイヤが供給している中で最も耐久力があると言われるハードタイヤだが、残り30周という長い距離を走らなければならないため、序盤から築いたリードを維持していく形でペースをコントロール。これによりタイヤの消耗を抑えて、万が一、後方からライバルが攻めてきた時に対応できる準備をしながら周回を重ねた。

・ポイント3 後続の動きに応じた迅速な対応

 後半は1分29秒台という控えめなペースで周回していたハミルトン。残り10周を切ったところで、備えていた“予想外の対応”が求められることになった。12番手からスタートしたセルジオ・ペレス(ザウバー)がハード→ミディアムとつなぐ戦略で2位に浮上。ファステストラップを毎周更新するペースで迫ってきたのだ。
 チームからペレスが迫ってきているという報告を受けたハミルトンは、温存していたタイヤを使ってプッシュを開始。1分28秒台のペースに戻して再び逃げ始めた。初優勝が欲しい若手のペレスも最後まであきらめず、4・3秒後方まで迫られたものの、トップの座をしっかり守った。ハミルトンは全く危なげないレース運びで今季3勝目を手にした。

 これによりトータル142ポイントでランキング2位に浮上したハミルトン。首位フェルナンド・アロンソ(フェラーリ)との差は37ポイントあるが、自身2度目のチャンピオン獲得に向けて、大きな1勝となった。

アロンソは3位表彰台、王座争いで一歩前進

 前回のハンガリーGPではスタート直後の多重クラッシュに巻き込まれリタイヤと、まさかのノーポイントで終わってしまったフェルナンド・アロンソ。今回はフェラーリチームの聖地モンツァ・サーキットでのレースということもあり、自身のチャンピオン争いのためにも、そして現地に駆けつけてくれた熱狂的なフェラーリファン“ティフォシ”のためにも、好結果を残したいレースだった。

 予選ではQ1・Q2とトップ通過。ポールポジションは確実かと思われた。ところがQ3でマシントラブルに見舞われてしまい、タイムアタックができず10位。悔しい結果となったが、これで終わるアロンソではなかった。

 決勝ではスタートから着実に順位を上げ、レース後半には同僚のフェリペ・マッサもかわして2位に浮上した。最後はペレスに先行を許したものの、表彰台圏内はしっかり守り、3位でチェッカーを受けた。残念ながらティフォシの前で優勝はできなかったが、チャンピオン争いをするジェンソン・バトン(マクラーレン)、セバスチャン・ベッテル(レッドブル)、マーク・ウェバー(レッドブル)がトラブルによりそろってリタイヤしたこともあり、前回ベルギーGPで詰められたポイント差を再び37ポイントに引き離した。

 レース後の表彰式で、ティフォシに対し何度もガッツポーズを見せたアロンソ。自身3度目、フェラーリチームとしては2007年のキミ・ライコネン以来となるチャンピオン獲得に向けて、聖地モンツァで大きな一歩を踏み出した瞬間だった。

小林可夢偉、9位入賞も僚友ペレスに敗れる

 日本の小林可夢偉は2戦連続で予選Q3に進出。僚友ペレスを上回り9位を勝ち取った。シーズン前半は予選でペレスに負けることが多く「予選が良くなれば……」という声も多くあったが、ここ数戦ではペレスを上回るパフォーマンスを発揮している。

 決勝では上位陣の戦略に合わせてミディアムタイヤでスタート。20周してハードタイヤに交換、後半は粘り強く走る作戦だった。しかし終盤はタイヤの消耗に苦しみ、残り8周で2ストップ作戦を選んでいたニコ・ロズベルグ(メルセデスAMG)にかわされ、11位に転落した。ポイント圏外となってしまったが、その後レッドブルチームの2台が相次いでリタイヤという波乱の展開にも助けられ、9位入賞で2ポイントを獲得した。

 一方、ペレスは12番手スタートからハード→ミディアムとつなぐ戦略で見事2位表彰台。可夢偉はポイントを獲得したにもかかわらず、チームメートの活躍の前に影が薄くなってしまった。しかし、ザウバーチームはこれまでモンツァを得意としておらず、可夢偉自身も苦戦するレースの1つだった。苦手意識を持っていたコースで2台ともポイントを獲得し、うち1台が表彰台に上がったということは、間違いなくチームがレベルアップしている証拠だろう。

 凱旋(がいせん)レースとなる日本GPまであと1カ月。可夢偉には次回のシンガポールGPでもポイントを獲得して、良い流れを作った状態で母国レースを迎えてほしい。

<了>
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著者プロフィール

1984年生まれ。幼少の頃から父の影響でF1に興味を持ち、モータースポーツの魅力を1人でも多くの人に伝えるべく、大学卒業後から本格的に取材・執筆を開始。現在では国内のSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に年間20戦以上を現地で取材し、主にWebメディアにニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載。日本モータースポーツ記者会会員

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