西武を勢いづける“超名門大卒の熱血助っ人”クリス・カーター
スタンフォード大を3年で卒業したエリート
誰よりも熱くプレーすることでチームに勢いをもらたしている 【(C)SEIBU Lions】
異色なのはその経歴だけではない。ベンチではスタメン出場でない時も早くからバットを握り、出場の機会を待つ。ライオンズが得点すれば誰よりも拳を高く上げて喜び、自らのバットで得点を挙げればベンチに向かってド派手なガッツポーズと雄叫びをあげる。味方をも破壊してしまうのではないか、と心配するほどの強烈なエルボータッチでチームメイトも“戦々恐々”。
6月末に1軍に合流してから打撃の調子も上々。グラウンド内外でファンに強烈な印象を残し、早くも人気急上昇中だ。
そんな彼のルーツとは――。
13歳のとき、膝に大ケガをしたというカーター。歩くことが困難になり、4カ月間ギブス生活。ようやくギブスが取れても、膝は思うように動かなくなっていた。
将来は野球選手になりたい、と夢見ていた少年は一気に地獄に落とされた。
「もうスポーツはできないんじゃないか。」
その絶望感はとてつもなく大きかった。
「当時はすごく落ち込んで、毎日ただ映画を観たり、テレビゲームばかりしていたんだ。」
歩くことが困難なケガから奮い立たせた父親の言葉
「お父さんに『これが残りの人生でお前がやりたいことなのか!?』と怒鳴られたんだ。お父さんは昔から僕や兄弟に挑戦させたり、勇気づけたりするのがうまかった。だから僕も『野球選手になれないんだったら医者になりたい』と思って、そのためにはたくさん勉強して学校で良い成績を残さなきゃって思ったんだ」
もともと勉強が好きだったというカーターはその後、名門スタンフォード大学へ進学。しかし、そこで出会ったコーチが再び彼を『野球選手』として成長させた。
「大学では有名なコーチの下で野球をやってたんだけど、彼はなかなか僕を試合で使ってくれなかった。だから僕はコーチに『僕は準備ができている、試合に出してよ』と言いに行ったんだ。でもコーチは『いや、君は準備ができていない、うまくないし、試合には出せない』と。そこで代打のチャンスでなんとか結果を出して監督やコーチに認められたいって思ったんだ。代打のチャンスは1回。このチャンスはもう二度と回って来ない。そんな思いで必死に結果を出し続けたんだ」
一打席で結果を出さなくてはいけない「代打」というポジションからチャンスをつかみ、子供の頃から夢見たプロへの扉を開いた。