ヤングなでしこ、田中陽子という驚き=U−20スイス女子代表 0−4 U−20日本女子代表
日本は1位を目指すべきか、それとも
スイスに快勝したヤングなでしこはグループ首位通過を果たした 【写真は共同】
韓国対ブラジルの試合は、ブラジルが多くの時間帯でゲームを支配していたものの、韓国も確かな技術と素早い寄せ、そしてみなぎるファイティングスピリッツを発揮して、これに対抗。的確な守備と鋭いカウンターから、後半29分と37分に立て続けにチョン・ウナがゴールを決めて、2−0でブラジルを下した。一方、神戸で行われていたナイジェリア対イタリアの試合は、オルデガのハットトリックでナイジェリアが4−0で完勝。圧倒的な強さでグループBをトップで通過し、韓国が2位を確定させた。
さて、日本はこのスイス戦で1位を狙うべきか、それとも2位を狙うべきなのか。日本は現在、ニュージーランドと同じ勝ち点4ながら、得失点差でグループ首位に立っている。ヤングなでしこを率いる吉田弘監督は、以前の会見で「テレビ側からすると(キックオフが)19時20分の方がいいかな」と冗談めかしに語っていたが、おそらく本音でも1位を狙っていることだろう。昨年から続く女子サッカーへの注目度をつなぎとめておくためにも、やはりゴールデンタイムでのテレビ中継は魅力的だ。加えて、1位になっても2位になっても、試合会場はずっと国立のまま。であるならば、日本としてはこのスイス戦にしっかり勝って、グループを1位抜けすべきであろう。そんなわけで、この日のヤングなでしこは必勝態勢のメンバーで臨んだ。
「サイドから崩しての得点」というテーマ
試合は序盤から日本ペース。後方からビルドアップして、ボランチ経由で両サイドに展開し、そこからドリブルで崩すか、クロスで折り返すというパターンが何度も見られた。特にトップ下の柴田のゴールへの姿勢、田中陽の攻守にわたる献身的なプレー、そして浜田の積極的なオーバーラップが光る。この日のスイスは、GKを含めて3名の選手が今大会初出場。シュベリー監督は、すでにグループリーグ敗退が決まっていることを受けて「若い選手で臨む」と宣言していた。そして、とにかく引いて守って、チャンスがあればカウンターという戦術に徹することで、開催国に一泡吹かせようとしていたのである。
対する日本は「サイドから崩しての得点」というテーマを掲げていた。前日会見で吉田監督は「サイドを崩してからのゴールがない。そこから点が入ると、いろんなバリエーションから点が入る」と語っている。ミドルシュートやセットプレーでの得点は日本の武器だが、決勝トーナメントでのタフな戦いを考えるならば、できるだけ多くの攻撃のバリエーションを試しておきたいところ。それもあって、この日のヤングなでしこは両サイドからの崩しにこだわりながら攻撃を仕掛けていった。ところがゴール前まではボールを運ぶものの、ちょっとした呼吸のズレやGKベニのファインセーブなどもあり、そのたびに攻撃陣は天を仰いだ。
それでも先制したのはヤングなでしこ。30分、相手ペナルティーエリア付近左でFKのチャンスを得ると、これを田中陽が右足を振り抜き、ゴールネットを豪快に揺らす。のちに判明したことだが、この時ベンチの吉田監督は、キッカーに横山を指名したという。ところが、この指示が「聞こえなかった」という田中陽は「わたしに任せて」と自らキッカーを志願した。彼女のキックの精度にも驚かされるが、それ以上に特筆すべきは、19歳とは思えぬ落ち着きと自身の技術に対する確かな自信である。だが田中陽が私たちに見せた驚きは、これで終わりではなかった。