異色、貪欲…甲子園に挑む指導者たち=神村学園・山本監督、佐世保実・清水監督

大利実
 夏の甲子園の土を踏めるのは、全国でわずか49人の監督たち。ひとりひとりにドラマがあり、甲子園に懸ける強い思いがある。

神村学園・山本監督の異色の経歴

神村学園高は初戦、平藪(写真)の好リリーフもあり智弁和歌山に3対2で勝利。次戦、優勝候補の光星学院高と対戦する 【写真は共同】

 初戦で難敵の智弁和歌山高(和歌山)を下した神村学園高(鹿児島)の山本常夫監督は、異色の経歴を持っている。神村学園に来る前は16年間、兵庫の高野連で審判を務め、甲子園でもジャッジした経験がある。
 実は、長い高校野球史の中で、審判と監督で甲子園を経験したのは山本監督だけ。後にも先にも、ひとりもいない。

 智弁和歌山戦で、審判経験者が指導するチームならではのプレーがあった。キャッチャーがバックホームに備える際、付けていたマスクを投げ捨てるのではなく、ポケットに引っかけて、返球を待ち構えていた。マスクがホームベース周りにあると、ホームを狙う三塁ランナーの邪魔になりやすいためだ。
 紅白戦では自ら、球審を務める。ストライク、ボールをきっちり判定できる球審がいてこそ、ゲームは成り立つものだ。また、球審目線で見ると、ピッチャーの球の質やキャッチング技術がよくわかる。

 少し話はそれるが、独自の練習法で「低め」を意識付けている場面を見たことがある。ブルペンでのピッチング練習中、キャッチャーがうつぶせに寝そべり、顔の前にミットを構えていた。
「低めに投げるための練習。あそこまでやれば、嫌でも低めに投げようとしますよね」
 自身の経歴だけでなく、ブルペンの練習法ひとつとっても興味深い。
 次戦の相手は昨夏、今春と2季続けて甲子園準優勝を成し遂げている光星学院高(青森)。優勝候補に対して、どのような戦いを見せるか、注目が集まる。

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著者プロフィール

1977年生まれ、横浜市出身。大学卒業後、スポーツライター事務所を経て独立。中学軟式野球、高校野球を中心に取材・執筆。著書に『高校野球界の監督がここまで明かす! 走塁技術の極意』『中学野球部の教科書』(カンゼン)、構成本に『仙台育英 日本一からの招待』(須江航著/カンゼン)などがある。現在ベースボール専門メディアFull-Count(https://full-count.jp/)で、神奈川の高校野球にまつわるコラムを随時執筆中。

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