陸上・山県、重量挙げ・水落……初の五輪で好パフォーマンスを見せた若い力

小川勝

アテネ五輪当時の三宅を上回った水落

競技を始めて5年で、五輪の6位まで来た水落は将来性を感じさせる 【Getty Images】

 重量挙げ女子48キロ級の水落は、初めての五輪で自己ベストの176キロを挙げて、6位入賞を果たした。重量挙げは、2種類の挙げ方の合計で勝負が決まる。一気に頭上まで引き上げて、そこから立ち上がる「スナッチ」。もう一つは「クリーン&ジャーク」で、こちらの方が重い重量を挙げることができる。

 水落はスナッチで76キロ、78キロ、80キロの3回をすべて成功させ、クリーン&ジャークでも92キロ、94キロ、96キロをすべて成功。クリーン&ジャークで自己ベストを1キロ更新、176キロという自己記録を五輪の舞台で樹立したのである。

 今年4月の日本選手権では、スナッチ80キロは成功したものの、クリーン&ジャークで95キロに成功したあと、96キロは失敗していた。
 また昨年は腰を痛め、6月の日本選手権には出場していない。十分な練習を積めない時期もあったが、五輪イヤーには見事に調子を整えてきた。

 水落は中学まで体操をやっていて、重量挙げを始めたのは高校に入ってから。競技を始めて5年で、五輪の6位まできたのである。
 指導している平成国際大の加藤仁監督は、水落について「試合になると心技体が一致するタイプ」と評していたが、ロンドンで、まさにそれを証明した形だ。

 水落の記録と順位には、それぞれ意味がある。今回、女子48キロ級で銀メダルを獲得した三宅宏実(いちごグループHD)が初めて五輪に出た8年前のアテネ五輪の時、ちょうど現在の水落と同じ、大学2年生だった。その時の結果は175キロで9位。つまり水落は、記録でも順位でも、アテネ五輪当時の三宅を上回ったのである。競技歴がまだ5年ということを考えると、水落が今後、三宅と同様に、メダルを狙えるレベルまで伸びていく可能性は十分にあると見ていいだろう。

 もちろん、重量挙げは、どの階級に選手が集中するか、大会によって変わってくる。今後の女子48キロ級が、常に今回と同レベルとは限らない。53キロ級の強い選手が、減量して48キロ級に参入してきて、レベルがぐっと上がってくるかもしれない。
 それでも、19歳で、初めて出た五輪で挙げた成績として、水落の成績は、将来性を感じさせるものだった。現役続行の意思を示している三宅とともに、4年後のリオデジャネイロ五輪では、2人で表彰台に上ることも、夢物語とは言えないだろう。

 初めての五輪という舞台で、力を出し切った若い2人の成果は、メダル争いとは違うレベルであっても、われわれをあっと言わせるものであり、注目すべきものであったように思う。

<了>

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著者プロフィール

1959年、東京生まれ。青山学院大学理工学部卒。82年、スポーツニッポン新聞社に入社。アマ野球、プロ野球、北米4大スポーツ、長野五輪などを担当。01年5月に独立してスポーツライターに。著書に「幻の東京カッブス」(毎日新聞社)、「イチローは『天才』ではない」(角川書店)、「10秒の壁」(集英社)など。

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