混戦模様のアルゼンチンリーグが開幕=2012−13シーズン展望

アイドルを失ったリーベルとボカ

トレゼゲ(中央)が健在のリーベルだが、カベナギとドミンゲスがチームを去った 【写真:Photogamma/アフロ】

 1部に復帰するリーベル・プレートは、現段階でGKのマルセロ・バロベロ(ベレス)とサイドバックのガブリエル・メルカド(エストゥディアンテス・デ・ラプラタ)以外に大きな補強は行っていない。スター選手のダビド・トレゼゲは健在だが、ダニエル・パサレラ会長との確執が原因で2人のアイドル、フェルナンド・カベナギとアレハンドロ・ドミンゲスを失うことになった。

 リケルメとの契約を抹消したボカ・ジュニアーズは、他にもパブロ・モウチェ、フアン・インサウラルデ、ファクンド・ロンカグリアら多くの選手を売却。さらにダリオ・ツビタニッチがレンタル期間を終えてアヤックスへ戻った。左ひざの前十字靱帯(じんたい)を負傷して長期離脱中のアグスティン・オリオンの代役となるGKには元ヘタフェのオスカル・ウスタリを補強、ディフェンスにはギジェルモ・ブルディッソ(アルセナル)を獲得したが、フリオ・ファルシオーニ監督は昨季終盤の不振とリケルメとの確執が原因で早期にクラブを去る可能性がある。そうなればチームは危機を迎えることだろう。

 鍵となる選手たちを失ったとはいえ、昨季王者のアルセナル、2位のティグレを優勝候補から外すことはできない。近年常にリーグを盛り上げてきたベレス、エストゥディアンテス、ラヌスらも同様だ。

新たな移籍先として注目されているのは

 現在のアルゼンチンリーグは成長期にある若手選手と国外から戻ってきたベテラン選手(トレゼゲに続き、エスパニョールやアトレティコ・マドリー、リバプールでプレーしたマキシ・ロドリゲスがニューウェルスへ、ディエゴ・プラセンテがアルヘンティノス・ジュニオルスへと加入)に支えられている。また20代半ばの選手たちが国外でのプレーを経て帰国するケースも増えてきた。

 逆にリーグを去った選手としては、昨季終了後にベロン、ガブリエル・ミリート(インデペンディエンテ)、エステバン・フエルテス(コロン・デ・サンタフェ)といった有名選手が現役を引退した。またフアン・マヌエル・マルティネスとアウグスト・フェルナンデス(ベレス)、ネストル・オルティゴサ(サンロレンソ)、カルロス・ルナとディエゴ・モラーレス(ティグレ)、マリアーノ・パボーネとフアン・ネイラ(ラヌス)、マウロ・ボセッリとエンソ・ペレス、マリアーノ・アンドゥハル(エストゥディアンテス)、リバイル・ロドリゲス(ベルグラノ)、セルヒオ・エスクデロ(アルヘンティノス・ジュニアーズ)らが国外へと移籍している。

 アルゼンチンは以前から選手の輸出国であり続けてきたが、ヨーロッパの経済危機によりその輸出先は多様化してきた。現在は中国、UAE、ブラジル、メキシコ、トルコなどが新たな移籍先として注目されている。

 ファンは技術レベルの向上、新たな若い才能の登場、ピッチ内外における暴力の減少、そして各チームが美しいプレーを目指すことを望んでいる。果たして新シーズンにその望みはかなうだろうか?

<了>

(翻訳:工藤拓)

2/2ページ

著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント