混戦模様のアルゼンチンリーグが開幕=2012−13シーズン展望

降格の恐怖にさらされている2チーム

ベロン(写真)やリケルメといったスター選手を失ったアルゼンチンリーグは全20チームが拮抗した状態で新シーズンを迎えた 【写真:Photogamma/アフロ】

 2人のスター選手、フアン・ロマン・リケルメとフアン・セバスティアン・ベロンを失い、ほかにも多くのトップレベルの選手が国外へと流出した後、2部で前代未聞の1年を過ごしたリーベル・プレートを加えたアルゼンチン1部リーグは全20チームの力が拮抗(きっこう)した状態で新シーズンの開幕を迎えた。

 開幕を前に、アルゼンチンサッカー協会(AFA)はいくつかのルール変更を行った。1つは年間王者の決定で、前期リーグ、後期リーグで2つのチャンピオンが存在したこれまでとは違い、両リーグの王者がホーム&アウエーの2試合を行い年間王者を決める1990−91シーズンと同じシステムが適用された。しかし、その後ファンの猛反対を受けたことで開幕直前に再変更を施し、これまで通り両リーグで2つのチャンピオンを認めた上、中立地開催の一発勝負で「スーペルカンペオン」を決める形に落ち着いた。

 またAFAはアペルトゥーラ(前期リーグ)、クラウスラ(後期リーグ)の名称をそれぞれイニシアル、フィナルへ変更。ナシオナルB(2部)へ自動降格するチーム数は2から3へと増え、同じく2部の上位3チームが自動昇格することになった。これに伴い、スタジアム内での暴動が目立った入れ替え戦が廃止されている。

 ビッグクラブのラシン・クラブ、インデペンディエンテ、サンロレンソらはチームが一新した。ただ黄金期を迎えているラシンとは裏腹に、他の2チームは近年の不振から降格の恐怖にさらされている。

生まれ変わったラシン・クラブ

 ジオ・モレーノ(上海申花/中国)、ルーカス・カストロ(カターニア/イタリア)、バレンティン・ビオラ(スポルティング・リスボン/ポルトガル)らの売却で多額の補強資金を得たラシンはセンターバックのフェルナンド・オルティス(ベレス・サルスフィエルド)、ボランチのディエゴ・ビジャール(ゴドイ・クルス)と2006年ワールドカップの優勝メンバーである元イタリア代表のマウロ・カモラネージ(ラヌス)、FWのホセ・サンド(ティフアナ/メキシコ)とハビエル・カンポラ(ウラカン)らを獲得。昨季までのベースに彼らが加わり豪華な布陣となった。

 20人以上の選手を放出したインデペンディエンテはほぼ完全に生まれ変わった。フリアン・ベラスケス、カルロス・マテュー、ファクンド・パッラ、パトリシオ・ロドリゲスらを国外のクラブに売却して得た資金により、経験豊富なディフェンダーのクラウディオ・モレル(デポルティボ・デ・ラコルーニャ/スペイン)、クリスティアン・トゥラ(アトレティコ・ナシオナル/コロンビア)、ボランチのジョナタン・サンタナ(リベルタ/パラグアイ)、ファビアン・バルガス(AEKアテネ/ギリシャ)、FWのルシアーノ・レギサモン(アルセナル)、パウロ・ロサレス(ウニオン・デ・サンタフェ)らを補強している。

 インスティトゥート・デ・コルドバとの入れ替え戦を制して辛うじて残留を決めたサンロレンソは、その後も執行部の総辞職など不安定な状態が続く中、テレビ会社を経営するマルセロ・ティネーリの投資を受けフアン・メルシエル(アル・ワスル/UAE)、フランコ・ハラ(ベンフィカ/ポルトガル)、デニス・ストラックアルルシ(エバートン/イングランド)、そしてアルヘンティノス・ジュニオルスからボランチのゴンサロ・プロスペリを獲得した。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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