“自前で育てる”強豪私立が取り組む中高一貫での強化策

大利実

仙台育英に見える小学→中学→高校と続く育成の流れ

 初日の第3試合に登場する仙台育英高(宮城)も、中学から強化を図っている。系列の仙台育英学園秀光中(宮城)は、2年連続で全中に出場した強豪だ。
 強くなり始めたのは高校3年生世代から。当時の主力が現在は仙台育英高で背番号1をつける渡辺郁也と、5番の早坂和晋だった。この代以降は連続で全中に出場し、大半のメンバーが仙台育英へ入学している。

 興味深いのが小学生の時、冬に行われる「NPB12球団ジュニアトーナメント」に出場する東北楽天ゴールデンイーグルスジュニアに選ばれた選手が多いということだ。渡辺、早坂は06年の優勝メンバーである。
 いま、秀光中の4番キャッチャーを務める若狭武瑠(中2)も楽天ジュニアの出身。秋田から「高いレベルでやりたい」と秀光中の門をたたき、寮生活を送っている。
 今後も楽天ジュニア→仙台育英秀光中→仙台育英という流れに注目である。

新しい強化策「中学硬式野球部」

 中学に「硬式」野球部を作る強化策もある。常葉学園橘高と戦う福井工大福井高(福井)は、系列の福井中に硬式野球部を創部。福井中学ボーイズとして戦い、全国大会出場の実績を持つ。
 大会6日目に登場する神村学園高(鹿児島)は神村学園中に硬式野球部があり、こちらは神村学園シニアで登録している。

 基本的にシニアやボーイズは学校外の活動となるため、「学校生活が見えてこない」と悩む監督もいる。多感な時期の中学生だからこそ、グラウンド以外での教えが人間的な成長につながっていく。それが中学に硬式野球部があれば、学校生活が見えるうえに、高校で使う硬球に早くからなじむことができる。
 また、軟式にも硬式にも通じることだが、中学3年で有望選手を勧誘しても、争奪戦になるのは必至。それならば、系列の中学校で選手を育て、高校に送り出したほうがチームをつくりやすいという考えもある。
 このように中学からの強化策を知ると、今まで以上に甲子園を楽しめるのは間違いない。

<了>

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著者プロフィール

1977年生まれ、横浜市出身。大学卒業後、スポーツライター事務所を経て独立。中学軟式野球、高校野球を中心に取材・執筆。著書に『高校野球界の監督がここまで明かす! 走塁技術の極意』『中学野球部の教科書』(カンゼン)、構成本に『仙台育英 日本一からの招待』(須江航著/カンゼン)などがある。現在ベースボール専門メディアFull-Count(https://full-count.jp/)で、神奈川の高校野球にまつわるコラムを随時執筆中。

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