“自前で育てる”強豪私立が取り組む中高一貫での強化策

大利実

常葉学園橘の個性的なチーム編成

現在、広島でプロの道を歩んでいる庄司隼人(常葉学園橘高卒)も中高一貫で育成された選手のひとり=2009年、夏の甲子園 【写真は共同】

 49代表校の出身中学を見ると、開幕戦に登場する常葉学園橘高(静岡)が個性的な編成でチームをつくっているのが分かる。ベンチ入り18名中、実に15名が系列の常葉学園橘中の出身。「内部進学者」を中心に甲子園を勝ち取った。

 常葉学園橘高が初めて夏の甲子園に出場したのが、2009年のこと。エースは庄司隼人(現・広島)だった。庄司は06年夏、常葉学園橘中のエースとして参加約9000校の頂点を争う全国中学校軟式野球大会(全中)に出場。初戦で敗れたが、最速144キロを記録した。
 常葉学園橘中は翌07年、夏の全日本少年軟式野球大会(全日本)に出場しベスト4入り。その後、10年には春の全日本準優勝、全中初制覇。11年には春の全日本ベスト8入りしており、そのメンバーがそのまま常葉学園橘高へ進学していることになる。
 4番を打つ道場嵩慈(2年)は10年の全中優勝メンバーで、1番ショートで活躍していた。1年生ながら県大会で打率3割4分4分を残した核弾頭の木村聡司も常葉学園橘中出身だ。

中高一貫でのチーム強化

 系列の中学が強い高校は、全国にいくつかある。日本一の経験を持つ明徳義塾中(高知)、星稜中(石川)、桐蔭学園中(神奈川)などが強豪として知られる。
 だが、高校では県外の硬式出身者はもちろん、軟式野球部からもライバルが入学し、しのぎを削る。それが互いのレベルアップにつながり、チーム力が上がっていく。
 常葉学園橘高にはこの争いがほとんどない。これに関し、学校関係者は「ほかの中学から選手が入ってこない」と悩んでいる。中学生の心理を考えると、「高校に入っても、橘中の選手とレギュラーを争わなければいけない。それなら別の高校に……」となるのだろうか。

 常葉学園橘高側も近年は開き直っている感があり、「中高一貫での強化で勝負する!」という声が聞こえてくる。中高一貫校のメリットは中学3年夏の大会終了後、高校の野球部と一緒に練習ができることだ。内部進学のため受験勉強もない。体がなまりがちな、高校入学までの半年間に、みっちり鍛えることができるのだ。

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著者プロフィール

1977年生まれ、横浜市出身。大学卒業後、スポーツライター事務所を経て独立。中学軟式野球、高校野球を中心に取材・執筆。著書に『高校野球界の監督がここまで明かす! 走塁技術の極意』『中学野球部の教科書』(カンゼン)、構成本に『仙台育英 日本一からの招待』(須江航著/カンゼン)などがある。現在ベースボール専門メディアFull-Count(https://full-count.jp/)で、神奈川の高校野球にまつわるコラムを随時執筆中。

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