波乱多き大会、三浦学苑が初出場で初V=インターハイ2012総括
大津、四日市中央工ら強豪校が早期敗退
前半終了間際、決勝のゴールを決めて喜ぶ三浦学苑・若林(6)と木村(7) 【写真は共同】
予想外の展開は1回戦から起こった。プロ最注目の逸材であるDF植田直通を擁する大津が、伏兵・帝京第三(山梨)に0−1で敗れると、こちらもプロ入り濃厚のFW浅野拓磨をけがで欠いた四日市中央工(三重)が、近大附属(大阪)に1−2で敗戦。3回戦では昨年度選手権ベスト4の尚志(福島)が羽黒(山形)にPKで敗れ、青森山田(青森)も武南(埼玉)の前に涙を飲んだ。準々決勝では昨年度インターハイ準優勝の静岡学園が三浦学苑に敗れ、同ベスト4の流通経済大柏(千葉)も大阪桐蔭(大阪)の前に敗退を喫した。
洗練されたサッカーを見せた大阪桐蔭
武南にPK戦の末に敗れた大阪桐蔭は永野悦次郎監督の下、非常に洗練されたサッカーが見られた。「就任当初からボールを保持して、いかに全員がゴールに向かったポジションを取って、パスをつなぎながらゴールを決めるかをずっとやってきた。だいぶ形になってきた」と永野監督が語ったように、大阪桐蔭は近年、サッカーの質が向上し、永野監督が就任してから8年目でMF福村貴幸(現京都サンガF.C.)、FW田中淳一(現川崎フロンターレ)といったJリーガーを輩出してきた。
今年もその質の高さは健在で、攻撃の起点となるボランチの上田侑弥、バランスを取るボランチの西山秀祐、右のドリブラー・松木政也、左のアタッカー・白井康介。そしてトップ下には181センチの高さを生かしたポストプレーと、裏への飛出しも得意とするMF丹羽詩温で構成する中盤は全国レベル。流通経済大柏戦は彼らが攻守において連動し、高校ナンバーワンと言われる流通経済大柏のハイプレスをかいくぐり、先制を許すが同点に追い付くと、最後はPK戦の末に勝利し、初の全国大会ベスト4入りを果たした。
しかし、迎えた武南との準決勝では訪れた決定機でパスを出してしまったり、フィニッシュの部分で手数をかけてしまい、追加点が奪えず。結局は同点に追い付かれてPK負けを喫した。「まだボーっとしてしまっている時間がある。アタッキングサードでもっと自分のエゴを出してもいい。そうしないと打つべきところで打たなかったり、優先順位を見失ってしまう。冬までにはそこを改善したい」(永野監督)。冬には、さらにたくましくなった大阪桐蔭が見られそうだ。
埼玉県勢として17年ぶりの決勝進出を果たした武南は、監督就任40年目を迎える大山照人監督が掲げる、狭い局面をワンツーとテンポの良いパス回しで崩していくエレガントなサッカーは今年も健在。今年のチームは2年生が多く、彼らが個人技を生かして、武南のサッカーを具現化している。右の奥村宣彦と左の室崎雄斗の両サイドアタッカーは、共にカットインが得意でバイタルエリアに幾度となく侵入してくる。流動的な前線に対し、守備は183センチのセンターバック三浦柾人ら3年生が中心となり、徹底したマンツーマンでボールにプレスをかける。ボールを奪うと、3年生・佐藤仁紀と2年生・鈴木裕也のボランチコンビが一気に攻撃のスイッチを入れる。攻守に置いてバランスのとれた好チームだった。
「ウチの大会前の目標は初戦突破。でも、昨年インターハイ2回戦で負けている鹿児島のチーム(昨年は神村学園に敗退。今年は鹿児島城西)に勝って、3回戦では(昨年のインターハイ初戦で勝利した)青森山田のリベンジを跳ね返し、どの試合も厳しい戦いをモノにしてきた。粘りが出てきたのは大きい。しかし、まだまだ強くなったわけではないので、冬に向けてどうこのチームを鍛えていくか。そこが重要になってくる」(大山監督)。
惜しくも準優勝に終わったが、大阪桐蔭同様に、どう進化してくるかが楽しみだ。