耐え抜いたハミルトンがポール・トゥ・ウイン=注目のタイトル争いはアロンソが一歩リード

吉田知弘

ポイントを絞り込んだハミルトン

ロータス勢から追われる展開を耐え抜き、今季2勝目を挙げたハミルトン 【Getty Images】

 2012年F1世界選手権の第11戦ハンガリーGPは29日、首都ブダペスト郊外のハンガロリンクで行われ、ルイス・ハミルトン(マクラーレン)がポール・トゥ・ウインで今季2勝目を飾った。

 スタートはトップを守って1コーナーを通過したものの、その後はロータスのマシンに追われ続ける展開となった。前半はロメ・グロジャンとの一騎打ちから逃げ続け、終盤にはキミ・ライコネンの猛追を耐え抜いての勝利だった。特にライコネンは圧倒的にペースが速く、いつ抜かれてもおかしくない状況。その中でハミルトンは「絶対に抜かれないために注意したコーナー」があった。

 ハンガロリンクは追い抜きポイントが少なく、チャンスがあるとすれば1コーナーと言われている。直前のメインストレートが今回のDRS(可変リアウイング)稼働区間になっているため、そこで前のマシンとの間合いを詰めて鋭角状の1コーナーで仕掛けるというのがセオリーな抜き方だ。逃げるハミルトンにとっては、DRSを使われる1秒以内に迫られてしまうと厄介なことになるため、稼働できるかの判定が行われる最終コーナーで相手との差を広げるような走りをしていた。

 最終コーナーを乗り切れば1コーナーで攻め込まれる可能性が低くなり、1コーナーを守れれば自らがミスをしない限り抜かれるリスクも減る。この一つのポイントに絞った走りでグロジャンやライコネンからのプレッシャーに耐えたのだった。

 これで通算19勝目を手にしたハミルトン。ドライバーズランキングでも117ポイントまで伸ばし4位。首位フェルナンド・アロンソ(フェラーリ)とは47ポイント差だが、残り9レースで逆転は十分に可能だ。

 開幕2戦連続でポールポジションを獲得するなど、確実にトップ争いに加われる実力は持っているが、不運なアクシデントや自らが焦ってのミスが続きポイントを取りこぼしているレースが多い。9月から始まる後半戦では上位入賞のレースを増やすことができるかが、彼にとって大きなポイントになりそうだ。

勝敗を左右する「流れ」を作るのは?

 このハンガリーGPが終了しF1は約1カ月の夏休みに突入する。これが終わると、いよいよ2012年のチャンピオン争いが本格的にスタートしていくことになる。このレースが終了し、チャンピオン争いは以下の5人に絞られてきた。

1位 フェルナンド・アロンソ(フェラーリ) 164ポイント
2位 マーク・ウェバー(レッドブル) 124ポイント
3位 セバスチャン・ベッテル(レッドブル) 122ポイント
4位 ルイス・ハミルトン(マクラーレン) 117ポイント
5位 キミ・ライコネン(ロータス) 116ポイント

 ハンガリーGPは5位に終わってしまった首位アロンソだが、2位ウェバーに40ポイントの差をつけ一歩リード。シーズン序盤は予選Q3に進出することができず、「調子が悪い」と騒がれていたが、その中でも11戦すべてでポイントを獲得していること、今季7人の勝者が誕生している中で彼だけが3勝を挙げていることが、このポイント差につながっている。

 そして、迎える後半戦。一番重要になるのが「いかにポイントの取りこぼしを抑えるか」だ。当たり前のように聞こえるが、ここからの後半戦は「流れ」を作れるかで展開が大きく変わってくる。40ポイント以上の差を追いかけるライバルたちにとっては、残りのレースすべてで上位入賞が求められる。どこか一つの勝利がきっかけで勢いが出る可能性は十分にあるし、逆に首位のアロンソも今までなかったマシントラブルやリタイアがあると、それが引き金で結果が出なくなってしまうこともあり得る。

 F1はクルマという機械を使った競技だが、チャンピオン争いの点においては、ほかのスポーツと同じく「流れ」というのが勝敗を左右する一要素となりうる。このままアロンソが逃げ切るのか? それともほかのライバルが大逆転劇を見せるのか? 次回ベルギーGPまでの約1カ月間、しばしお待ちいただきたい。

<了>
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著者プロフィール

1984年生まれ。幼少の頃から父の影響でF1に興味を持ち、モータースポーツの魅力を1人でも多くの人に伝えるべく、大学卒業後から本格的に取材・執筆を開始。現在では国内のSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に年間20戦以上を現地で取材し、主にWebメディアにニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載。日本モータースポーツ記者会会員

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