悲願のメダル獲得へ 必要なのは勝ちパターンの構築=五輪女子バレー展望
五輪最終予選で見えてきた不安
ロシアの202センチ・ガモア対策としてレシーブを極めた佐野 【坂本清】
2010年の世界選手権で3位、11年のワールドカップ(W杯)は4位に終わったが、3位の中国とは勝ち点の差がわずか2。イタリア、セルビア、中国に敗れて、3敗を喫したものの、格上のブラジル、米国にストレート勝ちを収めた印象がプラスに転じ、ロンドン五輪世界最終予選を前に眞鍋政義監督が「ロンドン五輪でメダルを獲得するために(最終予選は)1位通過が絶対使命」と公言しても、異を唱えるのは少数だった。
ところが、最終予選では8チームによる7戦総当たりのリーグ戦で、4勝3敗。1位通過どころか、出場権獲得は最終日の結果に託される事態を招く。結果として「2セットを取れば出場権獲得」という状況下で、セルビアから2セットを取り、フルセットで敗れはしたものの、辛くも3大会連続の五輪出場権を獲得する形となった。
このころから、半年前には少数派だった「異論者」が少しずつ増加する。
女子バレーのメダル獲得は危ういのではないか――。
それでもなお、選手たちは「メダル獲得のチャンスは、この3大会(アテネ、北京、ロンドン)の中で一番高い」と自信ものぞかせる。
なぜ、こうも捉え方が異なるのだろうか。
ロシアのエース・ガモアに屈したことで分かったレシーブの限界
最終予選でストレート負けを喫したロシア戦は、完全に負けパターンに陥った試合だった。
絶対的に劣る上背の「高さ」に対するために、日本はブロックとレシーブのディフェンスを固め、ロシアの攻撃を1本でも拾い、攻撃に転じるチャンスを作ろうとした。
しかし、サーブで攻めてレシーブを崩しても、相手の絶対エースとして君臨する202センチのエカテリーナ・ガモアは日本のブロックを壁とすることなく、十分な高さを生かせる場所に供給されたトスを自在に打ち切り、ディフェンスのいないポイントに確実にボールを落とし、得点を重ねた。
試合後、眞鍋監督は「ガモアはどうやっても止められない」と敗因を述べたが、この1戦で日本に与えられたダメージは、単に「1敗を喫した」こと以上に大きなものだった。
なぜなら、10年の世界選手権でロシアに完敗を喫した際も、全く同じパターンで、徹底してガモアに決められた。その反省から、W杯を迎えるにあたり、眞鍋監督は「サーブとサーブレシーブだけでなく、ディグ(スパイクレシーブ)でも世界一になれ」とチームに目標を課した。
ブロックシステムに劇的な改善がなされない以上、ガモアのボールは上がらない。それを前提とする中で少しでも失点を減らし、自チームの得点にするためにはレシーブで拾うしか策はない。
決して積極的とは言えない“ガモア対策”をもとにレシーブ練習が強化され、佐野優子(イトゥサチ/アゼルバイジャン)、竹下佳江(JT)ら、もともとレシーブ能力の高い選手だけでなく、江畑幸子(日立)、山口舞(岡山)といった、どちらかといえばレシーブを不得手とする選手のレシーブ力も向上し、W杯では日本のディグの成功率は出場国中、最も高い数字を記録した。
しかし実際は、敗因をもとに課題を克服して臨んだはずが、五輪直前の最終予選で完敗。多くの時間を費やしたにも関わらず、レシーブだけでは世界に勝てないと、皮肉な形で示すこととなった。