高まる期待と裏腹に冷静な市民? 開幕1週間前の英国・ロンドンは今

英国ニュースダイジェスト

サッカーなどでは統一チームを結成

英国代表主将としての活躍が期待されるギグス(マンU)。普段はウェールズ代表のため、この五輪が初の国際大会となる 【Getty Images】

 国籍ではなく、管轄団体という枠を取り払うことで話題を集めたのがサッカー。英連合王国を構成するイングランド、北アイルランド、スコットランド、ウェールズの各代表単位でチームを構成してきた長い歴史があるため、英国全体で一つの参加国と見なす五輪とはこれまでそりが合わず、大会出場さえできないことの方が多かった。
 
 しかし、ロンドン五輪開催をきっかけに、英国統一チーム結成の話が浮上。男子サッカーにおいては、英国統一チームの監督を選出する機会を与えられたイングランド以外の各サッカー協会が当初は反対を示すも、主将にウェールズ出身のライアン・ギグス(マンチェスターユナイテッド)を据えるなどの調整作業を経て何とか実現にこぎつけた。
 
 女子サッカーにおいても事情はほぼ同じ。07年のワールドカップでイングランドは北京五輪への出場権を得ていたにも関わらず、イングランド単体での五輪出場が認められず、優勝候補となるはずだったイングランド代表の北京五輪への出場は見送りとなってしまった。ロンドン五輪において、女子サッカーはその歴史上初めて英国統一チームを形成することになる。

落ち着いている英国の人々

 ただ、大会関係者たちがこれらの手配を行ったにも関わらず、ロンドン市民の反応は意外と冷めている。日々のニュースでは、英国代表の金メダルの獲得数よりも、開催期間中に予想される交通事情の乱れや関連機関のストの可能性、過剰ながら穴だらけの治安対策について語られることの方がずっと多い。
 
 日本では猫ひろし氏を巡って論争が起きた帰化問題についても、一部保守系の新聞が批判的に取り上げただけで、外国人在住者や二重国籍保持者の存在がもともと身近な英国の一般市民たちはそれほど気に留める様子でもない(そもそも彼ら帰化選手の名前や存在をきちんと心に留めている英国人は恐らくそれほど多くない)。
 
 統一チーム結成で話題を集めたサッカーにおいては、あまりの売れ行きの悪さに観戦チケット50万枚の販売を五輪開幕の1週間前に中止して、競技場の一部を閉鎖した上で試合を開催することが決定した。さらに陸上やホッケー、ビーチバレーなどの競技でもチケットの売れ残りが出る見通しだ。

 この冷めた態度は、果たして英国民特有の感情を表に出さない傾向によるものなのか、それとも五輪に対して本当に関心を持っていないからなのか。ロンドン五輪が幕を閉じたときの英国人がどんな反応を示しているのか、今から楽しみである。

<了>

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著者プロフィール

 英国で発行されている週刊日本語無料情報誌。1985年10月に創刊。ロンドンの日本食レストラン、日本食材スーパー、日系書店、デパート、学校、在英日系企業などを中心に無料配布を行っているほか、 英国全土における日本経済新聞国際版に折込まれている。フランス、ドイツにも姉妹誌あり。ロンドン五輪開催中は特設サイト(www.news-digest.co.uk/london-olympics)と特設ツイッター・アカウント(https://twitter.com/olympics_digest)を運営中。

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