議論の余地なき偉大なフットボールとスペインの覇権=もはやライバルは見当たらない
形だけの試合となった決勝
決勝でデル・ボスケ監督はF・トーレス(中央奥)とペドロ(右)を投入し4−0と勝利したが、今後も起用法を巡る議論は続きそうだ 【Getty Images】
だが現在、“ラ・ロハ”(スペイン代表の愛称)と他のあらゆるヨーロッパのライバルとの間に圧倒的な実力差があることに異論を唱える者はいない。期待されていたドイツ代表との決勝はイタリア代表のせいで実現せずじまいとなったが、そのイタリアもスペインとの決勝では何もさせてもらえなかった。
キエフで行われた決勝は形だけの試合だった。14分にダビド・シルバの先制点が決まった時点で均衡は崩れ、しかもジョルジョ・キエッリーニの負傷によりフェデリコ・バルザレッティの投入を強いられたイタリアのチェーザレ・プランデッリ監督は選手交代の選択肢を制限された。ビハインドを背負ったイタリアは同点ゴールを目指して前へ出ざるを得なくなり、相手にスペースを与えてボールを独占されることになる。まだ前半ではあったが、この時点ですでに試合の行く末は見えていた。そしてデル・ボスケが2人のFWを投入したことで、スコアは最終的に4−0まで開くことになった。
あれだけ出場時間が少なかったトーレスが得点王になったという事実は、スペインが試合を通してFWを起用していた場合の底知れぬポテンシャルをよく示している。よりボールポゼッションを重視したデル・ボスケのさい配はリスペクトすべきではあるが、優勝という結果により彼のさい配がすべて肯定されたとは言えない。今後も選手の起用法を巡る議論は続いていくに違いないからだ。
タイトルを勝ち取り続ける可能性は十分
スペイン、ドイツ、イタリアだけでなく、ユーロでは成功を手にできなかったオランダ、フランス、クロアチアといったチームもみな、フットボールの未来がテクニカルで美しいスタイルにあることを、今大会を通して示していた。
ボールポゼッションは攻撃のための手段であるだけでなく、守るという意味でも最善の方法である。マイボールを自ら放棄するのは賢い方法ではなく、精度と送り先があいまいなロングボールは有効ではない。ロイ・ホジソンのもとで過渡期を迎えたイングランドまでもが、結果以上に多くの失敗をもたらしたファビオ・カペッロ前監督のやり方では未来がないことに気づき始めている。
ヨーロッパはもとより、世界中を見渡しても現在スペインのライバルとなり得るチームは見当たらない。よって2013年のコンフェデレーションズカップ、そして同じくブラジルで行われる2014年のW杯でも、優勝候補の筆頭であるスペインがタイトルを勝ち取り続ける可能性は十分にある。