スペイン、唯一無二のスタイルで史上初の連覇=スペイン 4−0 イタリア

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イタリアを推す声もあったが……

不調を自ら認めていたシャビ(左)だが、決勝では見事なテクニックでスペインの攻撃をけん引した 【Getty Images】

 戦前の予想ではイタリアを推す者も少なくなかった。実力的にはスペインが上ながら、大会の流れ、勢いではイタリアに分があったからだ。

 グループリーグ初戦で対戦した際、イタリアは3‐5‐2システムでスペインに挑み、互角の戦いを繰り広げた末に1‐1で引き分けた。その後、最終ラインのメンバーが落ち着いた決勝トーナメントではイングランド、ドイツを内容的に圧倒して決勝に駒を進めてきただけに、チェーザレ・プランデッリ監督はかなりの手ごたえを得ていたはずだ。

 一方のスペインはイタリア戦以降4試合連続完封という守備の安定を武器に決勝までたどり着いたが、ゴールどころかチャンスすら作れない攻撃面の不安は試合を重ねるごとに増していた。

 はたして試合は、意外にも攻めの姿勢を忘れていたはずのスペインが4得点を挙げる一方的な展開となった。ただ、ここまでスコアに差がついてしまった裏には、いくつかの理由がある。そしてそのうちのいくつかは、イタリアにとって不運なものだった。

効かなかったイタリアのプレス

 プランデッリ監督は前日会見の予告通り4−3−1−2の布陣で臨み、けがから復帰したイニャツィオ・アバテを右サイドバックに起用した以外は準決勝ドイツ戦と同じメンバーをそろえてきた。

 対するスペインはグループリーグで対戦したときと、布陣もメンバーもまったく同じ。ビセンテ・デルボスケ監督はアルバロ・ネグレドを先発起用して周囲を驚かせた準決勝ポルトガル戦から一転し、再びセスク・ファブレガスの「偽センターFW」起用に賭けた。

 イタリアは立ち上がりからディフェンスラインをハーフライン付近まで押し上げ、高い位置からプレッシャーをかけてきた。それはスペインの中盤にボールが入る前の段階でビルドアップを阻み、ゲームの主導権を握らせないよう試みるという、準決勝のポルトガルと同じ能動的な守備の姿勢だった。

 しかし、スペインを敗退まであと一歩のところまで追い詰めたポルトガルとは対照的に、イタリアのプレスはほとんど効かなかった。

 その原因はまず、イタリアの選手たちのコンディション不良が挙げられる。「スペイン相手には持てるすべてのエネルギーを出しきることが必要。だがわれわれにはフレッシュさが欠けていた」とプランデッリ監督がなげいた通り、準々決勝イングランド戦で120分間の死闘を繰り広げたこと、そして準決勝ドイツ戦後の休みがスペインより1日少なかった影響は少なからずあっただろう。

 さらにこの日はスペインの調子が良かった。特に前日会見で「もっと試合を決める重要な役割を果たしたかったけれど、いつもできるものではない」と自ら不調を認めていたシャビ・エルナンデスのキレが戻ったことで、スペインのパスワークには本来の精度とスピードが戻っていた。

 試合直前やハーフタイムの水まきは行われなかったものの、ピッチコンディションが良好だったことも大きい。グループリーグの対戦でスペインが苦戦した理由の1つが、長く極度に乾燥した芝生だったからだ。

 これらの条件が重なった結果、イタリアはハイプレスを幾度となく突破され、ディフェンスラインが後退しながらの守備を強いられる。先制点の場面はまさにその形だった。

 14分、スペインのパスワークにより完全に足を止められたMF4人の間でアンドレス・イニエスタがボールを受け、ジョルジョ・キエッリーニの裏をとったセスクへスルーパス。最後はセスクのクロスをダビド・シルバが頭で合わせ、スペインの先制点が生まれた。

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