経験の差が出た隣国対決=ポルトガル 0(2PK4)0 スペイン

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機能したポルトガルの守備

スペインの厳しい守備をかいくぐりチャンスを作ったC・ロナウド(左) 【写真:Maurizio Borsari/アフロ】

 すでに時刻は深夜0時20分を過ぎていた。

 0−0のまま迎えたPK戦。後攻ポルトガルの4人目、ブルーノ・アウベスのキックがクロスバーの下をたたいて外へはじき出された直後、スペイン5人目のセスク・ファブレガスが放ったシュートは左側ゴールポストの内側をたたき、逆側のサイドネットに吸い込まれた。

 ポストの内側をたたいた2本のPKが、片や外へとはじき出され、片やゴールネットを揺らす。勝負を分けたのは、わずか数センチのズレだった。にもかかわらずそれが妥当な結果だと見る者に感じさせたのは、それだけの確かな差が両チームの間にあったからではないだろうか。

 この試合のポイントの1つは、劣勢が必須のポルトガルがどのようなスペイン対策をとってくるのかにあった。この点についてパウロ・ベント監督は、前日会見で次のように答えている。

「ゴール前を固めるような守り方はしない。それは大きな間違いになりかねないからね。ゲームを支配したい。われわれはボールポゼッションを目指す」

 はたしてポルトガルは、指揮官の言葉通りディフェンスラインを大胆に押し上げ、前線から厳しくプレスをかける積極的な守備をベースにゲームのイニシアチブを取りにきた。
 ジョアン・モウチーニョとラウール・メイレレスがシャビ・アロンソとセルヒオ・ブスケツへのパスコースをふさぎ、その後方に構えるミゲル・ベローゾはシャビ・エルナンデスを見張りつつ、時にサイドバックのアルバロ・アルベロアやジョルディ・アルバにまで厳しく体を寄せていく。

 スペインより2日多く休養を取った分だけ体力的に余裕があり、しかも前日までの蒸し暑さがうそのように肌寒くなった試合当日の気候も味方したのだろう。立ち上がりから豊富な運動量で球際に激しいプレスをかけてきたポルトガルに対し、スペインは全体的に体が重かった。9分にアルベロア、29分にアンドレス・イニエスタが惜しいシュートを放った以外、前半を通してほとんどチャンスを作れず。前半終了時点でボール支配率わずか54パーセント、枠内シュートとCKがゼロというデータは、いかにスペインが前にボールを運べなかったかを物語っている。

C・ロナウド対策を講じてきたスペイン

 一方、守備で奮闘したポルトガルも攻撃に関してはさっぱりだった。

「ボールポゼッションを目指す」というベント監督の言葉とは裏腹に、ポルトガルはボールを前に運ぶことができなかった。ボールを奪っても、素早いスペインのプレスにバックパスを強いられ、最後はGKルイ・パトリシオが苦し紛れのロングキックに逃げてマイボールを失ってしまう。そのため、途中からはボール奪取と同時にディフェンスライン裏へ抜け出すクリスティアーノ・ロナウドへ縦パスを送る速攻が主となったが、彼に対してはスペインもしっかり対策を整えていた。

 主戦場である左サイドではアルベロアとダビド・シルバの2人がかりで中へのカットインを阻み、縦に突破してきた際にはセンターバックのジェラール・ピケが素早くカバーリングに入る。それは逆サイドの場合も同じで、特にセルヒオ・ラモスのカバーリングは完ぺきだった。

 それでもC・ロナウドは果敢にスピードを生かした単独突破を挑み、何度かサイドを縦にえぐってクロスを上げ、危険な位置でFKを獲得するなど孤軍奮闘した。だが、たとえ彼がクロスを上げても、中に飛び込むのが1人か2人ではフィニッシュに至るのは難しい。さらに頼みの直接FKも不発に終わったため、前半はほぼノーチャンスという内容に終わった。

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