運営面で不完全燃焼感残すユーロ=遠すぎた2カ国、海外記者に聞く問題点
両国間の移動は非常に困難
2カ国共催だが、ポーランドとウクライナでそれぞれ独自に開催している印象が強いという 【Getty Images】
われわれもワルシャワからキエフまで約18時間かけて夜行列車で移動したが、ポーランド鉄道は西ヨーロッパ規格、ウクライナは旧ソ連規格と線路の幅が違う。このため、ポーランド国境の町・ドロフシク(Dorohusk)で出国手続きを行った直後、ウクライナ側に入ったところの工場での大がかりな台車交換が実施され、さらに入国手続きを経て、ようやく列車が動き出す。こうした作業のために3〜4時間も停車するのは想定外だった。これでは簡単に両国間を往来できないはずだ。
今回のウクライナの4会場のうち、最もポーランドに近いのがリビウなのだが、ポーランド側からそこに行くのも容易ではないという。実際に現地に足を運んだロシアの『ロシアンレポート』のアレックス・コベルヤツキー編集委員も「ポーランド国境からリビウにはローカル列車が1日に数本走っているだけでとても使えない。高速道路も未整備で、途中にけもの道のようなところがあるから、車移動も簡単ではない。せっかくの2カ国共催なのだから、せめて距離的に近いワルシャワとリビウをスムーズに往復できるような交通アクセスは整備してほしかったのだが……」と残念そうに話していた。
共催というよりはそれぞれの独自開催
そういう意味で、今大会はやはり不完全燃焼感を抱かざるを得ない。ポーランドとウクライナ国内では、共催パートナーの試合やダイジェスト番組がテレビ放送されてはいたが、双方の国民にとって共催パートナーの動向はあまり関心がなかっただろう。ポーランドサポーターがウクライナを訪れるケースが多かったことで、両国交流を促進してくれたが、機運盛り上げの問題はやはり残された。
次の16年大会はフランス単独開催に決まっているが、UEFA(欧州サッカー連盟)はその後も共同開催を積極的に推し進めていくだろう。その場合、どうすれば2カ国がもっと連携して有益な大会にしていけるのかをより真剣に模索する必要がありそうだ。そんなことを痛感させられる今回のユーロ2012だった。
<了>