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運営面で不完全燃焼感残すユーロ
遠すぎた2カ国、海外記者に聞く問題点

高評価を受けたポーランド

ポーランドとロシアのサポーターが衝突した事件はあったものの、大会はほぼ順調に進んでいる
ポーランドとロシアのサポーターが衝突した事件はあったものの、大会はほぼ順調に進んでいる【写真:AP/アフロ】

 27日の準決勝・ポルトガル対スペイン戦(ドネツク)、28日の同・ドイツ対イタリア戦、そして7月1日のファイナル(キエフ)の3試合を残すのみとなったユーロ(欧州選手権)2012。今回は距離的にかなり離れたポーランドとウクライナの共同開催ということで、運営面の成否も注目されていた。8日の開幕以来、表立った問題を挙げるとすれば、ポーランドとロシアのサポーターが衝突し、100人以上が拘束された13日のワルシャワ市内での事件くらい。全体的には、ほぼ順調に進んでいるといえる。


 スペインのニュースエージェンシー『Agencia Colpise』のティルコ・イグナシオ記者が「わたしは1次リーグから準々決勝にかけてポーランド国内を回って取材しているが、スタジアムはモダンで見やすく素晴らしいし、町のボランティアやメディアセンターの人々のホスピタリティーもある。本当に親切にしてもらって助かっている」とポジティブなコメントをしているように、世界各国から訪れる人々を快く迎えようとするホスト国の姿勢を評価する声がメディア関係者から多く聞かれた。


 実際、わたし自身もポーランドをベースに動いていたが、まず物価が日本の半分以下で非常に安く、過ごしやすかった。宿泊先もワルシャワ、グダニスク、ポズナン、ヴロツワフの4開催都市は高級ホテル中心に値段が跳ね上がっていたが、少し離れた場所に泊まるなどの対策を取れば問題なかった。移動に関しては、「ワルシャワ〜グダニスク間が約250〜300キロの距離なのに列車で6時間もかかる」「飛行機の便数が少なすぎて、なかなか利用できない」「高速道路の整備が済んでおらず、スムーズに走れない箇所があった」といった厳しい意見も出たが、わたし自身は鉄道で動いていてそこまでストレスは感じなかった。というのも、走るのはゆっくりでも時間が非常に正確だったからだ。トラムやバスを使ってもダイヤ通りに来るから、時間を要することだけ念頭に置けば、計画通りに動ける。そういう意味では、かなり快適だった。


 ポーランドでの移動に関して唯一、驚かされたのが、ワルシャワでの試合開催時間にワルシャワ・ナショナル・スタジアム周辺を走るトラムが止まってしまうこと。これは13日のサポーター同士の抗争をきっかけに安全確保を考えて取られた措置というが、ボランティアや市民でもそれを知らない人が結構いた。結果として情報が届かず、ワルシャワ中央駅まで深夜に40分間かけて歩く羽目に。しかし、スタジアム北側を走る国鉄の列車は頻繁に出ていた。そういうインフォメーションがきちんと徹底されていれば、より快適だっただろう。トラブルといえるのはその程度で、ポーランド側はおおむね良好だった。

地元メディアと海外メディアで評価分かれるウクライナ

 一方、ウクライナ側はポーランドより物価が高い上にホテルが少ないため、大会前から宿泊先の確保が非常に難しかった。キエフ市内では「1泊10万円以上という法外な値段を提示してくるホテルもあって困惑した」という話を複数の関係者から耳にした。キエフ、ドネツク、ハルキフ、リビウの距離も非常に遠く、都市間移動に苦労するメディアも続出したようだ。


『コリエレ・デロ・スポルト』のマッシモ・バシーレ記者も「開幕からウクライナ側にいることが多いが、とにかく移動が大変だ。一番移動しやすいはずのキエフ〜ドネツク間も距離は約300キロ程度なのに6時間以上かかる。イタリアと同じでよく列車が止まったり、遅れたりもする。表示もキリル文字がほとんどなので、われわれには難しい。何か重要なインフォメーションが書かれていたかもしれないが、すべてが分からないのでもどかしい」と苦笑いしていた。


 確かに、キエフ市内の移動ひとつ取っても難しさがあった。24日の準々決勝・イングランド対イタリア戦当日は、キエフ・オリンピック・スタジアムのメトロの最寄駅である「Olimpiiska」駅が、安全対策のため臨時閉鎖されていた。ところが、メトロ駅に配置されている英語を話せる案内ボランティアはそのことを全く知らず、われわれは何度もその駅に行くために地下鉄に乗る羽目になった。駅にイングリッシュスピーカーを配置する努力は素晴らしいが、肝心の情報が抜け落ちていたのでは元も子もない。結局、キエフ中心部の独立広場に設置されているファンゾーンからスタジアムまで、通常なら15分もあれば移動できる距離を1時間以上も要することになってしまった。


 重い荷物を持っているカメラマンはメトロを使えないので、タクシーや車を利用することになるが、スタジアムへの誘導がハッキリせず迷ったという。アイルランドのフォトエージェンシー『Atf photo Agency』のアンソニー・スタンリー・カメラマンは「タクシーがどこからスタジアムに入っていいか分からず、周辺を1時間近くもグルグル回ることになり、本当に困った」とあきれ顔で話していた。


 ウクライナはアルファベットの国でなく、英語を話せる人の比率もポーランドよりグッと下がることから、どうしても混乱要素が増えてしまう。それはやむを得ない部分もあるのだが、もう少し改善の余地はあったように思える。だが、ウクライナのスポーツウェブサイト『is−sport.ua』のアンドリー・シニアスキー記者は「アクセス面もホスピタリティーもほぼ問題なかったと思う」と話していたから、地元メディアと海外からやって来たメディアの感覚には多少なりとも温度差があったようだ。

元川悦子
元川悦子

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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