「継続こそ栄光への道」を示したデル・ボスケ=『ラ・ロハ スペイン代表の秘密』ユーロ2012版
ギャンブル王と名手は違う
デル・ボスケはゴールにつながる選手の起用において、100パーセント的中させている 【Getty Images】
デル・ボスケは今回、どうやら手ぶらで帰国することになりそうだ(2009年コンフェデレーションズカップでは、スタッフのパコ・ヒメネスとのコンビで見事、賞金王に輝く)。準決勝進出チームがまだ2チーム決まっていない状況で、アルビオル、レイナ、セスクが賞金レースの上位3人。この中から王者が生まれることになる。サッカーを知る者が、必ずしも賭け上手というわけではないことが、今回、わたしの調査でわかった。どうやらレースの最後尾に近いところには、イニエスタの名があることが分かった。さらに、ラ・ロハのもう1人の魔術師シャビも、その辺りをウロウロしているらしい。
(レポート/ミゲル・アンヘル・ディアス、翻訳/木村浩嗣)
ゴールに直結する選手の起用では百発百中
グループステージ第1節では、イタリア相手に思うようにボールを支配できず、先制された後に辛くも引き分けた。セスクを偽センターFWとして先発させた「ゼロトップという選択は正しかったのか?」という批判の声は、当然上がった。だが、殊勲の同点ゴールを決めたのは誰だったのか? 監督が大抜てきしたセスクだった。
第2節、大勝したアイルランド戦はどうか? 1トップとして先発したのはトーレス。彼は開始4分に先制ゴールを決めて流れを引き寄せ、さらに3点目を追加し、実質的に試合を終わらせた。その後、4点目を決めたのは、やはり代わって入ったセスクだった。
第3節のクロアチア戦での内容の悪さは、ミゲル・アンヘルが文中で指摘している通り。が、そこには目をつむり得点者に目を向けてみると、1位通過を決める決勝点を蹴り込んだのは、ヘスス・ナバスだった。彼は攻撃力アップのため、後半の途中でトーレスに代わって入った選手である。
さらに、準々決勝のフランス戦。これまでで最高の内容で、デル・ボスケには一転、称賛の声が集まっているのだが、誰が決定的な仕事をしたのか思い出してほしい。2点を挙げたシャビ・アロンソは「ダブルボランチの一角として外すべき」という意見が文中にも出ていた選手。加えて、ダメ押し点のきっかけとなるPKを奪ったのはペドロで、そのペドロにスルーパスを出したのはカソルラと、やはり交代策は的中した。デル・ボスケとメディアの対立は、今回取り上げたクロアチア戦をピークにトーンダウンしそうだ。
文/木村浩嗣
<続く>
『ラ・ロハ スペイン代表の秘密』(ソル・メディア)
『ラ・ロハ スペイン代表の秘密』ミゲル・アンヘル・ディアス著、木村浩嗣訳 定価:本体1,680円(税込)/ソル・メディア 【ソル・メディア】
スペイン代表と親交の深い著者が長期に渡る密着取材とチームの全面協力を得て執筆。今年4月スペインで発売され、たちまちベストセラーとなった本書を海外サッカー週刊誌『footballista』編集長・木村浩嗣が翻訳。プロローグはカシージャス、エピローグはビージャが特別寄稿!