岐路を迎えた可夢偉に求められること=F1 不完全燃焼に終わった6月のGP
「来季シートに暗雲」との報道
6月のGPでは不完全燃焼の走りが続いた可夢偉。チームメートのペレスが結果を残しているだけに、現状打破が求められる 【Getty Images】
6月のF1GPは、カナダ、ヨーロッパの2戦。カナダGPでは昨年、大雨に見舞われる中で一時2番手を快走した。一方、バレンシアでのヨーロッパGPでは、2010年に、終盤にソフトタイヤを投入する戦略が当たり、フェルナンド・アロンソをオーバーテイク。過去、「コバヤシ」の名を世界にとどろかせたグランプリということもあり、ファンはもちろん可夢偉自身も良いイメージを持ち、それなりの期待を持って臨んだはずだ。
だが、カナダGPでの可夢偉は予選で11番手とQ3進出を逃すと、2ストップ作戦で上位進出を期して臨んだ決勝でもストレートの速いフォースインディアを駆るポール・ディ・レスタらに行く手を阻まれ、トラフィックを抜け出せぬまま不完全燃焼の9位フィニッシュ。2ポイントを獲得した可夢偉だが、あろうことかチームメートのセルジオ・ペレスが予選15番手から1ストップ作戦を成功させ、3位表彰台に立ったことで思いもかけない窮地に追い込まれた。「小林可夢偉の来季シートに暗雲!?」などとの憶測が、まことしやかに報道されるに至った。
ピットストップで流れが変わる
それだけに、バレンシアでの可夢偉は思うようにならない状況の打破に懸けていたし、それが課題でもあった予選での7番手獲得という結果にもよく現れていたのではないだろうか。
そして日曜の決勝で、可夢偉は好スタートを決め5番手に浮上すると、オープニングラップにパストール・マルドナードをとらえ4番手に。独走態勢に持ち込もうとするセバスチャン・ベッテルには逃げられたが、5番手のマルドナード以下を引き離し、2番手を争うルイス・ハミルトン、グロジャンに粘り強く食らいつく好走を披露した可夢偉の走りに、「今度こそ可夢偉が……」と大きな期待を持ったファンも多かったろう。可夢偉自身も「今日こそは……」と思ったのではないだろうか。
だが、そんな時間は長くは続かなかった。グロジャンに抜かれ3番手に下がったハミルトンが先にピットに入り、3番手に浮上した可夢偉もピットへ。しかしここでの可夢偉のストップタイムは6秒2。ザウバーチームは左フロントの交換に手間取り、普通で3秒前半、速いチームでは2秒台で終える作業に倍の時間を費やすことになり、ようやくピットを離れた可夢偉は後からピットインして来たライコネンの後塵を拝してポジションダウンしてしまう。
予選ポールからトップ10までが1秒以内にひしめくきん差の戦いでの3秒ものロスは、そこまで自身の描いた復活のシナリオを完ぺきにこなして来た可夢偉には大き過ぎる足かせとなった。その後リスキーな形で追い抜こうと並びかけたブルーノ・セナの幅寄せを受け、フロントウイングにダメージを受けピットイン、さらにSC(セーフティーカー)明けにはフェリペ・マッサを抜こうとして接触しリタイア。「ピットストップで流れが変わってしまった」と振り返った可夢偉だが、明らかにピットストップ後の可夢偉にはレース序盤に見せていた“らしさ”が消え、怒り、もどかしさ、そして焦りといった感情が上回り、普段の冷静さが欠けていたように見えた。