石川遼が米国遠征で手にしたチャンスとシード権への重圧

いまひとつ覇気がない? 石川遼の今シーズン

今季の国内ツアーでは10位が最高。賞金ランキングも46位と、いまひとつ結果が出ていない 【写真は共同】

 今季、日本ツアーを戦う石川遼から覇気が感じられないという声を、ファンも含め各方面から何度も耳にした。相変わらずショットの精度を高める取り組みは、父・勝美氏の指導の下で続けているのだが、いざ試合が始まると攻めにいつものようなしつこさがない。スコアメークに淡泊な印象は拭えないというのが正直なところだ。

「プエルトリコオープンで2位になってから、遼の頭の中は米ツアーのシード権でいっぱいになってしまい、正直に言って試合に没頭できていないようでした。しかし、あれだけ頑張ってきたのですから、それ以上頑張れと言うのは酷だと思うのです」と言うのは父の勝美氏だ。「あれだけ頑張ってきた」とは、プロ入り以来、石川遼が日本ツアーをけん引し続けてきたという意味で、「そろそろ遼の心の赴くままにさせてあげたい」という親心である。

米ツアーのシード権獲得へ、高いハードルを設定

 米国を転戦する際、石川遼が、というより石川勝美氏も含めた“チーム遼”が常に念頭に置いているのは、米ツアーがメンバー外の選手に課している「年間12試合、そのうち主催者推薦による出場は7試合まで」という制限だ。その制限は、前年度の賞金ランク150位の獲得賞金額を上回った時点で、本人の希望次第で撤廃され、スペシャルテンポラリーメンバーの資格が与えられる。3月のプエルトリコオープンの2位で得た賞金37万8000ドルを上積みして石川はそれをクリアした。つまり、主催者のオファーさえあれば、無制限で米ツアーに出られことになり、念願の米ツアーシード獲得への道が大きく開けたのだ。

 これを受けて、5月のクラウンプラザ招待から約1カ月、5試合の米ツアー転戦が始まった。その2戦目、ジャック・ニクラウスがホストを務めるザ・メモリアルトーナメントは、これまで何度も出場を打診されていたにもかかわらず、国内ツアー優先という事情もさることながら、試合数制限を考慮すると辞退せざるを得なかった試合だ。
 今回の5試合のうち予選通過はたったの2回だったものの、ザ・メモリアルトーナメントでは9位タイという好成績を挙げ、獲得賞金額は78万8271ドルになった。シーズン終了時点で賞金ランク125位に入っているのが米ツアーのシード権の条件で、現時点までに稼いだ金額がそれをクリアしているかどうかは断定できない。ここ数年の125位の獲得金額を見ると、昨年が66万8166ドル、一昨年が78万6977ドル、さらにその前年が66万2683ドルだ。石川は“当確”と言っても間違いない90万ドルとかなり高いハードルを設定してこの5試合を戦っていた。

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著者プロフィール

長らく週刊ゴルフダイジェストでトーナメント担当として世界4メジャーを始め国内外の男子ツアーを取材。現在はフリーのゴルフジャーナリストとして、主に週刊誌、日刊誌、季刊誌になどにコラムを執筆している。

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