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レベルの違いを見せつけた前回王者
スペイン 2−0 フランス
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イタリア戦以来の「偽センターFW」起用

スペインはシャビ・アロンソ(写真)の2ゴールでフランスを寄せ付けず、準決勝進出を決めた
スペインはシャビ・アロンソ(写真)の2ゴールでフランスを寄せ付けず、準決勝進出を決めた【Getty Images】

「セスクvs.大型バス」


 キックオフの1時間ほど前、スペイン紙『アス』のウェブサイトを開くと、そんな大きな見出しが目に飛び込んできた。


「先発メンバーはまだ迷っている」。前日会見でそう言っていたスペインのビセンテ・デル・ボスケ監督は、アイルランド戦、クロアチア戦と先発起用していたフェルナンド・トーレスではなく、イタリアとの初戦以来となるセスク・ファブレガスの「偽センターFW」起用を再び選択。イタリア戦後に受けた批判もなんのその、あくまでスペイン最大の強みであるMFで勝負する姿勢を示した。


 対照的に、フランスのローラン・ブラン監督は司令塔として攻撃をコントロールするサミル・ナスリを先発から外し、フィジカルと運動量に長けるフローラン・マルダとヨハン・カバイエ、ヤン・エムビラを逆三角形の形に並べる4−1−4−1でスタートした。


 前日会見でブランは「自分たちのスタイルを貫こうと言いたいところだが、相手はスペインなんだ」と言っていた。ナスリを中心にボールをキープしながら攻撃を仕掛ける自分たちのスタイルを貫きたくても、ポゼッション勝負ではかなわないスペインに対しては中盤の守備力を強化する必要がある。今大会絶好調のアンドレス・イニエスタを止めるべく、右サイドバックのマチュー・ドゥビュシーを右MFに起用したこともまた、本意ではないものの、相手と自軍の戦力を比較した上で下した決断だったのだろう。


 とはいえ、フランスは「大型バス」と表現するほどゴール前に引きこもるわけではなかった。DFラインをある程度押し上げた状況でコンパクトな陣形を保ち、相手のボールホルダーには厳しくプレッシャーをかけていく。それはできる限り相手を自軍のゴールから遠ざけ、かつ相手ゴールに近い位置でボールを奪ってショートカウンターを仕掛けるという、能動的な守備の姿勢だった。

手数をかけた遅攻からフランスゴールをこじ開ける

 対するスペインはいつも通り丁寧にショートパスをつないでゲームを組み立てながら、時に逆サイドに開いたサイドバックへの大きな展開を交えて相手の守備ブロックを左右に揺さぶっていく。だが、イタリア戦もそうだったように、3トップ全員がMFの布陣では、スピードを生かしてDFラインの裏に抜け出していく選手がいない。6分にはゴール前右に抜け出し縦パスを引きだしたセスクがガエル・クリシーに後ろから倒されPKをアピールしたが、このようなシーンは数えるほどしか見られなかった。


 しかし、スペインは時間と手数をかけた遅攻からフランスのゴールをこじ開けてしまう。


 19分、中盤左寄りでボールを受けたイニエスタがドリブルで縦へスピードアップし、その外側を駆け上がったジョルディ・アルバへスルーパス。受けたアルバは並走するドゥビュシーをスピードで振り切ってゴールライン際まで持ち込み、中をちらりと確認して柔らかいクロスを上げる。その先にフリーで走り込んだシャビ・アロンソが狙い澄ましたヘディングシュートでGKウーゴ・ロリスの足下を破り、自身の代表100キャップ記念に花を添えた。


「最初の30分間失点を防げれば、相手をいら立たせることができる」。ブランが言っていた戦前のプランはこの時点で狂った。だが、その後もフランスはすぐに戦い方を変えることができなかった。フィジカル重視のメンバーで辛抱強く守ってスコアの均衡を保ち、相手に疲れが見え始める後半半ばに勝負を仕掛ける。劣勢が必然のフランスにとって、それが最も現実的な勝利への道だったからだ。


 実際スペインは後半も半ばを迎えると個々の運動量が落ち、球際でミスが生じてボールを失う回数が増えてきた。まだ体力的に余力が残っていたフランスが勝負を仕掛けるのはこの時間帯以外にない。そう考えたブランは64分にジェレミー・メネスとナスリを同時投入し、システムを本来の4−2−3−1に戻して勝負に出る。一方のデル・ボスケも、コンパクトネスを保ちきれなくなってきたフランスの守備陣にとどめを刺すべく、ペドロとトーレスの投入で前線にスピードと運動量をプラスした。


 30度近い暑さによりお互い疲労が見えはじめたゲーム終盤、そのさい配が形となったのは後者の方だった。90分、ゴール前左でサンティ・カソルラのパスを受けたペドロが鋭いまたぎフェイントから縦に突破を図る。追いすがるアンソニー・レベイエールは後方からペドロを倒してしまい、勝負を決定づけるPKがスペインに与えられた。

いつも通りのプレーをそつなくこなす

 この試合の数日前、元フランス代表で現在はテレビのコメンテーターを務めるビセンテ・リザラズが言っていた。


「フランスが勝つためには120パーセントの力を出さなければならない。だが、スペインは80パーセントで十分だ」


 相手が無理に追加点を奪いに来なかったことでスコア的には終盤まで可能性を保てたものの、90分間を通してフランスが手にしたチャンスと言えば、ゴール左上をとらえたカバイエの直接FKとフランク・リベリーのクロスをフリーのドゥビュシーが頭で合わせた50分のシーンくらいのものだ。


 一方のスペインは、マイボール時は華麗なパスワークで相手を翻弄(ほんろう)し、相手にボールを渡しても4バックとボランチ2人を中心とした守備ブロックでしっかり相手の攻撃を受け止め、終始危なげなく最少得点差を保ち続けた。


 相手に合わせた戦い方に徹することで何とかスコアの均衡を保ったフランスに対し、スペインが勝つにはいつも通りのプレーをそつなくこなすだけで十分だった。やはりこのチームのレベルは抜けている。ポルトガルとの準決勝に向けては2日間休みが少ないハンディキャップがあるが、それくらいがちょうど良いのかもしれない。


<了>


文/工藤拓、提供/WOWOW

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