- footballista(フットボリスタ)
- 2012年6月20日(水) 10:10

第1節と第2節、ビジャの不在に“偽センターFW”と“本物センターFW”で応えたデル・ボスケ監督。一見、“即興を反省し、オーソドックスに修正”に見えるが、指揮官はそんなのんきではないようだ。
ラ・ロハ(スペイン代表)を裏から表から楽しむために、現地で記者(『ラ・ロハ スペイン代表の秘密』の著者ミゲル・アンヘル・ディアス)を密着させた、この特別編。今回は、イタリア戦とアイルランド戦で問題視された2つのさい配についてレポートする。
アンタッチャブルとタッチャブル
今大会のスペインには、1つ誰もが疑問を持つポジションがあった。
2年前の南アフリカワールドカップ(W杯)のときには、それは中盤だった。ジャーナリストもファンも、初戦でスイスに敗れた後はなおさらブスケツとシャビ・アロンソのダブルボランチは長続きしない、デル・ボスケはどちらかを攻撃的なMFに入れ替え修正するだろう、と考えていた。だがあのとき、デル・ボスケ監督は「もし選手にもう一度なれるならブスケツのようになりたい」という発言で、すべての疑問を打ち消した。
今回もどうやらブスケツ、シャビ・アロンソ、シャビの中盤はアンタッチャブルのようだ。
アイルランド戦のような比較的楽な相手でもデル・ボスケは誰も温存しようとはしなかった。3人はラ・ロハの機能に不可欠な存在なのだ。ダブルボランチの狙いは、ブスケツに両サイドバックが上がったときの3枚目のセンターバック役をさせ、シャビ・アロンソには2列目からシュートを打たせること。デル・ボスケが監督に就任後、シャビ・アロンソは12ゴールを決め、これはビジャ、シルバ、トーレスに次ぐものだ。彼らは両サイドバックのカバーリング役であり、グラウンド上の監督でもある。デル・ボスケには2人抜きの11人は考えられないようだ。
ユーロ2012を前に、われわれジャーナリストの唯一の疑問はセンターFW(CF)の人選だった。23人の招集枠にはトーレス、ジョレンテ、ネグレドの候補者がいたが、イタリア戦ではセスクが偽CFに起用され、誰もが驚くことになる。セスクはゴールで、この“実験”に一定の結果を出した。しかしなぜ、ゼロトップだったのか。
偽CFへの批判と方向転換
その説明は、アイルランド戦の前日にデル・ボスケの口から漏れた。「起点となるデ・ロッシを抑えたかった」。あの日、デ・ロッシは3バックの真ん中、センターバックとしてプレーした。つまり、もし正センターバックのバルザーリがケガをせずにイタリアが4バックであれば、デル・ボスケは普通にCFを置いたはずで、こんな騒動になることもなかったろう。
偽CFが使われたのは初めてではなく、過去には成功を収めていた。昨年11月のユーロ予選スコットランド戦でCFに起用されたシルバは2ゴールを挙げ、その1カ月後の親善試合、コスタリカ戦ではセスクが同じポジションでプレーした。ところが、イタリア戦では前例ほど実がなく、スペインは引き分けに終わった。
デル・ボスケは即興を嫌う。彼のスタイルではない。
イタリアのプランデッリ監督を欺くためにメディアを煙に巻いただけだ。今から振り返ってみると、セスクは常にシャビ、イニエスタ、シルバと組んで練習をしていた。ただ、ケガから回復したばかりで先発はないと思い込んでいたので、われわれの誰もそれを重視することがなかった。
イタリア戦でのデル・ボスケのプランは激しい批判の的になった。翌日には親しい記者に「わたしのアイデアに全員が反対なら、わたしが間違っていたのかもしれない」と漏らしたとされる。
注目の第2戦アイルランド戦。偽CFか、それとも正真正銘の9番か。決断はデリケートだった。セスクは先発し続けるに値するだけの活躍を見せていたからだ。デル・ボスケは、前日会見で「わたしは責任を負うのに理想的な年齢になった」と、思わせぶりな言い方をしていた。