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メッシに必要なチームとは何か
天才を擁するがゆえに生じた問題

スタイルを見いだしたサベーラ監督

ブラジル戦でハットトリックを達成したメッシ(10番)。アルゼンチン国内で批判されることはなくなったが
ブラジル戦でハットトリックを達成したメッシ(10番)。アルゼンチン国内で批判されることはなくなったが【Getty Images】

 ニュージャージーで行われたアルゼンチン対ブラジルの親善試合は、何よりも多くのゴールを期待していた米国の人々にとって最高な、攻守がめまぐるしく移り変わる素晴らしい攻防の末に4−3でアルゼンチンが競り勝った。この試合でハットトリックを達成したリオネル・メッシについては、もし彼が穴のない完ぺきな、しかも攻撃的な代表チームでプレーしたら、果たしてどこまで遠くへたどりつくのだろうかという疑問を抱いている。


 8万人の観衆に見守られたニュージャージーの一戦にて、メッシは唯一無二の輝かしいシーズンを終えた。サッカー史上、所属クラブと代表チームでシーズン合計80ゴール以上を挙げた選手など、これまでほとんどいなかった。


 美しいプレーに対する愛情が根本にある哲学の下でプレーできるバルセロナは、今もメッシにとって代表よりずっと居心地の良い環境であり続ける。一方、アルゼンチン代表のメッシにとって、この1年はチームの土台を固め、飛躍への準備を整えるシーズンとなった。


 今やアルゼンチン国内でメッシを批判するという大それた行為に出る者はいなくなった。よって現在の彼にとって一番の問題は、アレハンドロ・サベーラ監督が2014年のワールドカップ(W杯)・ブラジル大会へ向けてほぼ決定的なスタイルを見いだしてしまったことにある。

代表では初となるハットトリックを達成

 ディエゴ・マラドーナとの比較という無意味な論争に加え、メッシはアルフィオ・バシーレ(2006‐08)、マラドーナ(08‐10)、セルヒオ・バティスタ(10‐11)と監督を頻繁にすげ替えてきたアルゼンチンが抱える長期的な強化計画の欠如という問題とも戦わなければならなかった。


 いずれの場合もメッシは、小心者で守備的な戦い方を好み、悪名高き「攻守のバランス」という言葉に権威を与えた監督たちのさい配を受け入れざるを得なかった。これらの監督は皆、より多くのボランチやDFを起用すべくFWの数を減らしてきたため、いつもメッシは単独、もしくはほとんどフォローがない状況でのプレーを強いられてきた。


 これらの監督が就任して以来、メッシはほぼ常に自身の前方に1人のFW(通常はゴンサロ・イグアイン)しかいない状態でプレーしてきた。サイドアタッカーが時折攻撃に参加するとはいえ、守備のタスクを課された彼らはすぐに自身のマークを捕まえるべく自陣に戻らなければならない。全く異なるバルセロナのシステムでのプレーに慣れているメッシにとって、それはあまりにも孤立した状況である。


 プレーに対する批判を受けなくなった2012年に入ったころから、メッシはサベーラが自身のパフォーマンスを高めるシステムに巡り会えたのではないかという希望を抱きはじめた。ベルンで行われたスイスとの親善試合でサベーラは、奪ったボールをすぐメッシに預けられるよう、そしてメッシがゴールに近い位置からドリブル突破を開始できるよう、ディフェンスラインを高く押し上げ、メッシのすぐ近くに4人のMFを横一列に並べた。


 そのテストは成功し、メッシは代表では初となるハットトリックを達成した。さらにサベーラは6月2日にブエノスアイレスで行われたエクアドルとのW杯南米予選にて、マンチェスター・シティでエクセレントなシーズンを送り、ユース世代からメッシのプレーを最もよく理解してきたセルヒオ・アグエロを前線に加えたトリデンテ(3トップ)をとうとう採用する。その結果手にした4−0というスコアは、攻撃サッカーへの希望を増幅させることになった。

セルヒオ・レビンスキー/Sergio Levinsky
セルヒオ・レビンスキー/Sergio Levinsky

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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