今大会も賭け事で団結、スペイン代表の不謹慎=『ラ・ロハ スペイン代表の秘密』ユーロ2012版

微笑むデル・ボスケ

“偽CF”の位置に入ったセスク(10番)はイタリア戦で同点ゴールを決めた 【Getty Images】

 今季不調だったトーレスはかつての“絶対的なレギュラー”の看板を下ろした。2月のベネズエラとの親善試合に招集外となったことで、今大会に呼ばれない可能性すらあった。最後の数カ月で帳尻を合わせて間に合ったが。首をかしげる解説者やファンはいるが、デル・ボスケが最も好むFWはネグレドだ。ラ・ロハの背番号11は20歳の時にラージョ・バジェカーノのカンテラからレアル・マドリーへ移ったが、デル・ボスケはその2年前にクラブを去っていた。首脳陣は、的確にボールを触りコンビで崩すサッカーに最も適したFWは、彼だと考えている。

 コッリーナUEFA(欧州サッカー連盟)審判部長の訪問も受けた。彼は選手にルールの適用方法について説明を行ったが、その際にビデオで例示された問題シーンの中に、昨季チャンピオンズリーグ準決勝でのペペが退場になったダニエウ・アウベスへのプレーが含まれていた。タイミングが違えばレアル・マドリーの選手とバルセロナの選手の古傷を蒸し返したかもしれないが、今、ユーロ連覇を目指し新たな歴史を作り始めようとする選手からは、冗談やからかいが出てきただけだった。デル・ボスケはその様子を、笑みを浮かべ満足そうに見ていた。

(レポート/ミゲル・アンヘル・ディアス、翻訳/木村浩嗣)

みんなだまされた“ゼロトップしかもセスク”、次の一手は?

 スペインのメディアでイタリア戦のゼロトップを予想した者はいなかった。「みんながだまされた」とは『マルカ』紙。

 代表番の記者たちは、試合前に「トーレスだ」「ネグレドだ」と1トップの人選について意見を戦わせていた。偽CFに入ったのがミゲル・アンヘルの言うシルバではなく、ケガが治ったばかりで親善試合に出られず、ぶっつけ本番のセスクだったのも驚きだった。

 わたしがゼロトップを読めなかったのは、偽CFにシルバまたはセスクを起用するとFW不在となるからだ。ミゲル・アンヘルが文中で例示したスコットランド戦では、左にFWビジャが入っていた。点取り屋抜きのMFだけで構成する純粋なゼロトップで、果たして点が取れるだろうか、という疑問があったからだ。

 ブスケツは、デル・ボスケが愛用してきたダブルボランチの片割れではなく、バルセロナと同じ1ボランチとして見事なプレーを見せた。サッカーくじの胴元に名乗り出た時と同じく、堂々としたまるでベテランのような振る舞いで、さらに株を上げた。逆に、決定機を2度外したトーレス、得点したものの機能していたとは言いがたいゼロトップ……、デル・ボスケの次の一手が注目される。“もうだまされない”ミゲル・アンヘルのレポートを待ちたい。

(文/木村浩嗣)

<続く>

『ラ・ロハ スペイン代表の秘密』(ソル・メディア)

『ラ・ロハ スペイン代表の秘密』ミゲル・アンヘル・ディアス著、木村浩嗣訳 定価:本体1,680円(税込)/ソル・メディア 【ソル・メディア】

スペイン代表、全面協力のベストセラーが日本上陸! EURO2008、2010年W杯を制し、サッカー界の頂点に立った“ラ・ロハ”ことスペイン代表。あの“ダメ代表”がなぜいきなり無敵になったのか? カシージャス、シャビ、イニエスタら中心選手や、監督、スタッフの証言によって明かされる、驚くべきチームの舞台裏。なぜラウールは外されたのか?“ボールを持って動かす”スタイルを確信した試合とは? チームを結束させた賭けトランプの部屋とは?

スペイン代表と親交の深い著者が長期に渡る密着取材とチームの全面協力を得て執筆。今年4月スペインで発売され、たちまちベストセラーとなった本書を海外サッカー週刊誌『footballista』編集長・木村浩嗣が翻訳。プロローグはカシージャス、エピローグはビージャが特別寄稿!

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著者プロフィール

国内唯一の海外サッカー週刊誌『footballista(フットボリスタ)』。欧州から南米まで、世界のフットボールシーンの日常を現地直送でお届け。EURO2012も総力を挙げて徹底レポート。毎週水曜日、全国の書店・コンビニエンスストア・駅売店で発売中。350円(税込)/48ページ/オールカラー。iPhone、iPad、各種Android端末対応のデジタル版も好評配信中

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