今大会も賭け事で団結、スペイン代表の不謹慎=『ラ・ロハ スペイン代表の秘密』ユーロ2012版
微笑むデル・ボスケ
“偽CF”の位置に入ったセスク(10番)はイタリア戦で同点ゴールを決めた 【Getty Images】
コッリーナUEFA(欧州サッカー連盟)審判部長の訪問も受けた。彼は選手にルールの適用方法について説明を行ったが、その際にビデオで例示された問題シーンの中に、昨季チャンピオンズリーグ準決勝でのペペが退場になったダニエウ・アウベスへのプレーが含まれていた。タイミングが違えばレアル・マドリーの選手とバルセロナの選手の古傷を蒸し返したかもしれないが、今、ユーロ連覇を目指し新たな歴史を作り始めようとする選手からは、冗談やからかいが出てきただけだった。デル・ボスケはその様子を、笑みを浮かべ満足そうに見ていた。
(レポート/ミゲル・アンヘル・ディアス、翻訳/木村浩嗣)
みんなだまされた“ゼロトップしかもセスク”、次の一手は?
代表番の記者たちは、試合前に「トーレスだ」「ネグレドだ」と1トップの人選について意見を戦わせていた。偽CFに入ったのがミゲル・アンヘルの言うシルバではなく、ケガが治ったばかりで親善試合に出られず、ぶっつけ本番のセスクだったのも驚きだった。
わたしがゼロトップを読めなかったのは、偽CFにシルバまたはセスクを起用するとFW不在となるからだ。ミゲル・アンヘルが文中で例示したスコットランド戦では、左にFWビジャが入っていた。点取り屋抜きのMFだけで構成する純粋なゼロトップで、果たして点が取れるだろうか、という疑問があったからだ。
ブスケツは、デル・ボスケが愛用してきたダブルボランチの片割れではなく、バルセロナと同じ1ボランチとして見事なプレーを見せた。サッカーくじの胴元に名乗り出た時と同じく、堂々としたまるでベテランのような振る舞いで、さらに株を上げた。逆に、決定機を2度外したトーレス、得点したものの機能していたとは言いがたいゼロトップ……、デル・ボスケの次の一手が注目される。“もうだまされない”ミゲル・アンヘルのレポートを待ちたい。
(文/木村浩嗣)
<続く>
『ラ・ロハ スペイン代表の秘密』(ソル・メディア)
『ラ・ロハ スペイン代表の秘密』ミゲル・アンヘル・ディアス著、木村浩嗣訳 定価:本体1,680円(税込)/ソル・メディア 【ソル・メディア】
スペイン代表と親交の深い著者が長期に渡る密着取材とチームの全面協力を得て執筆。今年4月スペインで発売され、たちまちベストセラーとなった本書を海外サッカー週刊誌『footballista』編集長・木村浩嗣が翻訳。プロローグはカシージャス、エピローグはビージャが特別寄稿!