開催国に歓喜をもたらしたシェフチェンコ=ウクライナ 2−1 スウェーデン

中田徹

全員が平均点以上のプレーをしたウクライナ

2得点で逆転勝ちの立役者となったシェフチェンコ。ユーロ初出場の母国を勝利に導いた 【Getty Images】

 真夜中に試合が終わった。翌朝の移動が早いため、許された睡眠時間はわずか2時間。しかし、寝過ごす心配はない。アンドリー・シェフチェンコをたたえる6万5000人の「シェーバ! シェーバ!」の大歓声が、今もなお僕の鼓膜をふるわせている。これに勝る目覚まし時計はないだろう。

 シェフチェンコはもう35歳。それでもピッチの上での存在感は抜群だった。55分には右からのクロスをヘディングで突き刺し同点弾。61分には左CKを再びヘッドで合わせて逆転弾。ひとりでチームの全得点をたたき出し、ユーロ初出場の母国を2−1の勝利に導いた。

「20歳のような気分だ」と、試合後もシェフチェンコはアドレナリンを全開させていた。

 アンドリー・ボロニンもまた、ベテランらしく機能した。シェフチェンコの2ゴール目、つまりチームの決勝ゴールは、ボロニンがうまくパスを受けてから獲得したCKから生まれた。

 この2人のスターだけでなく、スウェーデン戦のウクライナは皆、平均点以上のプレーをした。エフゲン・コノプリュンカは前半から左サイドを脅かし、後半に入ると右サイドのアンドリー・ヤルモレンコと連係を構築した。そのヤルモレンコはシェフチェンコの同点弾をアシスト。このゴールにつながる右サイドバックのオレグ・グセフのドリブルも見事だった。

イブラヒモビッチのプレーはさすがだったが

 一方、スウェーデンのスター、ズラタン・イブラヒモビッチも試合に華を添えた。52分の先制ゴール、72分の鋭い弾道のボレーシュート、90分のヨハン・エルマンデルとのワンツーなど、時おりみせる怖いプレーはさすがだった。しかし、ウクライナのCKから生まれた決勝ゴールは、シェフチェンコのニアポストへの巧みな走り込みにイブラヒモビッチが気付かず決められたもの。エースの競演はシェフチェンコに軍配が上がった。

 また、スウェーデンは前線のオラ・トイボネン、マルクス・ローゼンベリ、セバスティアン・ラーションが沈黙。ハムレン監督は62分から71分にかけて、この3人を代えないといけなかった。反対にウクライナのオレグ・ブロヒン監督は相手が交代策を使い切った後、シェフチェンコ、ボロニン、コノプリャンカの活躍をねぎらうようにベンチに下げた。

 最後、エルマンデルが決定機に力んでいなければ、スウェーデンは勝ち点1を得ることができたかもしれない。それでも、90分間を振り返ってみれば両チームの出来の差は歴然。試合後、からし色に染まったスタンドに手を振りながら更衣室へ下がるシェフチェンコの、誇らしげな姿が印象的だった。

<了>
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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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