戦うスピリットを失ったアイルランド=アイルランド 1−3 クロアチア

栗原正夫

スペイン、イタリアから勝ち点を奪うのは

日韓W杯では戦うスピリットを見せ、多くのファンを沸かせたが、その面影はもはやない。キーン(左)はシュートすら打たせてもらえなかった 【Getty Images】

 サッカーではよく集中が切れやすい「立ち上がりの5分と、最後の5分に注意しろ」と言ったものだが、アイルランドはまさにその前後5分間をしのぎ切れずに3点を失った。ただ、敗戦は集中力や運だけの問題ではない。

 02年の日韓W杯では、最後まで戦うファイティング・スピリットで強烈な印象を残したアイルランドだが、この日は粘りも熱も感じなかった。エースのキーンはシュートすら打たせてもらえず、そのキーンと前線でコンビを組んだケビン・ドイルも“ナイアル・クイン”(元アイルランド代表選手)にはなり切れず。セントラルMFグレン・ウィーラン、キース・アンドリュースのコンビはアイデアに欠け、右サイドのダフもサイドで孤立し、単調なクロスを上げるにとどまった。

 後半は、53分にドイルに代わってジョナサン・ウォルタース、54分にはマクギーディーに代わってサイモン・コックスが投入されたが、ウォルタースがわずかに自慢のフィジカルの強さを見せたものの、コックスはミスもあって流れを変えるどころか逆に流れを削ぐことに。

 終盤はクロアチアがペースダウンしたことで、何度かアンドリュースがゴール前に顔を出すシーンもあったが、ゴールを脅かすまでには至らず。チャンスといえば、セットプレー絡みで、流れのなかで有効な攻撃は90分を通して見られなかった。最後までスタンドから声援を送り続けたサポーターは試合後も拍手で選手をたたえたが、日韓W杯の印象が強く残っている第3者的立場でいえば、肩透かしを食らった気分だった。

 スタメンに6人も30代の選手が顔をそろえていることからも、連戦には不向きか。この日の出来から考えると、残る2戦、アイルランドがスペイン、イタリアから勝ち点を奪うことは、奇跡以上の何かが起こらない限り難しいそうだ。

 一方のクロアチアは、2トップがいい時間帯にゴールを重ね、労せずして勝ち点3を手に入れた印象だ。エースのマンジュキッチは2ゴールと結果を残しただけでなく、体を張ったプレーで前線で攻撃の起点となり、役目を全う。中盤も司令塔のモドリッチが中央でタメを作り、左からはペリシッチ、右からはイバン・ラキティッチとスルナのコンビでの仕掛けが目立つなど、バランスの良さがうかがえた。唯一不安をのぞかせたのは、前日までハムストリングの負傷で出場が危ぶまれていたベドラン・コルルカのセンターバックでのプレーぐらい。失点の場面では、ゴールにつながるFKを与え、最後はセントレジャーに競り負けるなど、いいところがなかっただけに、次戦以降、スペイン、イタリアとの戦いを考えると不安は膨らむ。

 ただ、あとがなくなったアイルランドに対し、クロアチアは首位に立って少しばかりの余裕を持って第2戦以降に臨めることになったことは間違いないだろう。

<了>

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著者プロフィール

1974年生まれ。大学卒業後、映像、ITメディアでスポーツにかかわり、フリーランスに。サッカーほか、国内外問わずスポーツ関連のインタビューやレポート記事を週刊誌、スポーツ誌、WEBなどに寄稿。サッカーW杯は98年から、欧州選手権は2000年から、夏季五輪は04年から、すべて現地観戦、取材。これまでに約60カ国を取材で訪問している

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