ハミルトンが今季初V、7人目の勝者に=可夢偉、9位入賞も存在感を発揮できず

吉田知弘

7人目の勝者が誕生、さらなる混戦模様に

通算18勝目となる今季初勝利を飾ったハミルトン(右) 【写真:ピレリ】

 2012年F1世界選手権第7戦カナダGPは10日、ジル・ビルヌーブ・サーキットで決勝が行われ、2番手スタートのルイス・ハミルトン(マクラーレン)が今季初優勝。7戦を終えて7人目の勝者が誕生することとなり、今季の混戦模様を示す結果となった。

 今季のハミルトンは開幕戦、第2戦と連続でポールポジションを獲得したものの、決勝では思うようなレース運びができずに6戦を終えて勝利なし。その間に僚友ジェンソン・バトン(マクラーレン)をはじめ、セバスチャン・ベッテル(レッドブル)、フェルナンド・アロンソ(フェラーリ)、マーク・ウェバー(レッドブル)とライバルたちが続々と優勝、さらにニコ・ロズベルグ(メルセデスAMG)やパストール・マルドナード(ウィリアムズ)が初優勝を飾るなど若手ドライバーも台頭してきた。

 過去に例を見ないほど短期間で多くの主役(勝者)が誕生している今シーズン。07年のデビュー以来、ほぼ毎年チャンピオン争いに絡んできたハミルトンにとって、6戦を終えて未勝利という結果に対して、一人取り残されたという感覚を覚えていたに違いない。

「自分たちは勝つ力を持っているはずなのに勝てない」と、レースを重ねるごとに焦りが増していったハミルトン。気が付くと、チームに対して批判的なコメントをするようになり、長年一緒に戦ってきたマクラーレンと決別し、他のチームへの移籍話があるといううわさも流れ始めていた。

猛烈な追い上げで首位に返り咲く

 そんな中、再び舞い込んできた今季初勝利へのチャンス。ハミルトンは、勝利への強い覚悟と、チームの戦略を信じて最後まで攻めきった。

 2番手からスタートしたハミルトンは、1回目のタイヤ交換をうまく利用してトップに立ち、順調に2位アロンソ、3位ベッテルとの差を広げていく。ところが50周目に2回目のタイヤ交換を済ませたハミルトンに対して、優勝争いをするアロンソ、ベッテルはそのまま1回のタイヤ交換で乗り切る作戦に出る。マクラーレンのピット作業がもたついたこともあり、ハミルトンはレース終盤に大きなハンデを背負ってしまった。

 だが、今回こそ優勝が欲しいハミルトンはここから鬼神のような走りを見せる。次々とファステストラップを記録してアロンソ、ベッテルを猛追。最大で14.8秒開いていた首位アロンソとの差を毎周1秒以上詰めていく。

 一方、1回のみのタイヤ交換で乗り切ろうとしたアロンソとベッテルは、終盤になってタイヤの消耗が進みペースダウン。後方からすさまじい勢いで迫ってくるハミルトンに抵抗することができなかった。ハミルトンは62周目にベッテルをかわすと、64周目にもアロンソをパスして再び首位に返り咲く。そのまま首位を守りきってチェッカーフラッグを受け、通算18勝目となる今季初勝利を飾った。らしさを感じさせる走りで今季7人目の勝者となったハミルトンはドライバーランキングでも首位に立った。

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著者プロフィール

1984年生まれ。幼少の頃から父の影響でF1に興味を持ち、モータースポーツの魅力を1人でも多くの人に伝えるべく、大学卒業後から本格的に取材・執筆を開始。現在では国内のSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に年間20戦以上を現地で取材し、主にWebメディアにニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載。日本モータースポーツ記者会会員

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