本命はスペイン、ドイツ、オランダ=ユーロ2012 大会展望

C・ロナウドを擁するポルトガルだが

リーガエスパニョーラでゴールを量産したC・ロナウド(赤)を擁するポルトガルは、最激戦区のグループに組み込まれたこともあり、苦しい戦いが予想される 【写真:ロイター/アフロ】

 開催国のポーランドとウクライナが第1シードの2枠を占めた代償を払う形で、オランダとドイツは共に最激戦区のグループBに組み込まれた。この2チームはお互いを止めることも、消耗させることもできると言える。

 グループBにはさらにモルテン・オルセン監督率いる難敵デンマーク、そしてレアル・マドリーで驚異的なシーズンを送ったばかりのクリスティアーノ・ロナウドを擁するポルトガルがいる。とはいえパウロ・ベント監督はいまだにポルトガルをチームとしてまとめられておらず、先週末に行われたトルコとのテストマッチを1−3で落とした後には彼の続投に疑問を寄せる声が急激に高まってきている。

 グループAも実力は拮抗(きっこう)しているが、個の力ではポーランドとロシアがチェコとギリシャを上回っている。ポーランドはドルトムントで素晴らしいシーズンを終えたストライカーのロベルト・レバンドフスキ、そして地元開催の利を生かしてグループリーグ突破を目指す。オランダ人監督のディック・アドフォカート率いるロシアは、イタリアを3−0で下すなど、本大会を前に良い成績を残している。また経験豊富な選手が多く、近年は国内リーグもレベルが上がってきている。

 ギリシャとチェコには、共に成功をつかんだユーロ2004の再現を目指すという共通点がある。ギリシャは8年前、開幕戦と決勝の2回にわたって開催国ポルトガルを破り、予期せぬ王者となった。今の彼らに当時のような自信は見られないとはいえ、あの大会以降ヨーロッパサッカー界はこの国の存在を無視することができなくなった。ミハル・ビレク監督率いるチェコの出来はトーマス・ロシツキーのゲームメイクにかかっているが、8年前のパベル・ネドベドのようなタレントが今のチームにはない。

けが人が続出しているイングランド

 最後にグループDだが、開催国のウクライナはアンドリー・シェフチェンコ、アンドリー・ボロニンら主力選手がキャリアのピークを過ぎてしまっている。それでもファンの後押しを受けた彼らが最後の輝きを放つことができれば、オレグ・ブロヒン監督が70年代に選手として成し遂げた成功を繰り返すことができるかもしれない。先日オーストリアに敗れたことで国民が寄せる期待はやや弱まってはいるが、この国の未来が暗いと言い切ることはできない。

 ほかのスウェーデン、フランス、イングランドは名前的にはウクライナより上ではあるが、いずれも本命に挙げられるほどの力はない。スウェーデンの出来はズラタン・イブラヒモビッチの調子次第。そのイブラヒモビッチはミランでの良いシーズンを終えたものの、チームとしてはあまり期待できそうにない。ローラン・ブラン監督率いるフランスはサミル・ナスリ、フランク・リベリー、フローラン・マルダ、カリム・ベンゼマらスター選手を擁しながらも近年は不振が続き、2年前のW杯も内部崩壊で世界に醜態をさらした。

 ファビオ・カペッロ前監督の衝撃的な辞任のショックが冷めやらぬイングランドは、ロイ・ホジソンの就任でその問題を解決したものの、本大会を直前にしてけが人が続出している。すでにフランク・ランパード、ガレス・バリー、ガリー・ケーヒルの欠場は確定。さらにジョン・テリーも間に合うかどうか怪しくなるなど、とても落ち着いて開幕を迎えられるような状態にはない。

 いずれにせよ、世界中のサッカー人は今週末から7月1日の閉幕までの間、「アルゼンチンとブラジルが不在のW杯」と呼ばれる大会を注視することになる。あとはボールが動きはじめるのを待つだけだ。

<了>

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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