本命はスペイン、ドイツ、オランダ=ユーロ2012 大会展望

4年前からベースが変わっていないスペイン

シャビ(中央)やシルバ(左)など多くの多くのタレントをそろえるスペイン。今大会も優勝候補の筆頭だ 【Getty Images】

 4年間待ち焦がれたユーロ(欧州選手権)2012が、とうとう8日に開幕を迎える。ポーランドとウクライナで行われる今大会は、痺れるような試合が見られるという大きな期待感を生んでいるだけでなく、ここ数年にわたり圧倒的な強さを保ち続けるスペイン、そして虎視眈々(たんたん)と覇権奪回を狙うドイツ、オランダの3カ国が高い確率で優勝を争うと見られている。

 この3カ国を優勝候補の筆頭とする理由は、ユーロ2008と2010年のワールドカップ(W杯)・南アフリカ大会を振り返ればすぐに分かる。前者ではドイツ、後者ではオランダがそれぞれ決勝でスペインと対戦し、敗れているからだ。

 ここ数年、この3カ国はヨーロッパだけでなく、世界的にもトップレベルの座を保ち続けてきた。

 スペインのベースは4年前からほとんど変わっていない。カルレス・プジョルとダビド・ビジャの負傷離脱がなければ、その顔ぶれは2年前のW杯とほぼ同じになっていったはずだ。ビセンテ・デル・ボスケ監督のチームを簡潔に表現するならば、その特徴は誰もがうらやむ継続性、そしてボールポゼッションとバルセロナのシステムに集約することができる。

 共に豊富なタレントをそろえているドイツとオランダは、スペインと同じくテクニックに優れた選手たちを生かした攻撃的なプレースタイルを信条とし、予選で好成績を残してきた。ほかのチームが何らかの問題を抱え、また危機的状況に置かれている現状、スペインとタイトルを争う可能性が最も高いのはこの2チームだと言うことができる。

八百長問題に揺れるイタリア

 グループリーグの組み合わせに恵まれたスペインは、準々決勝進出に大きな障害はないように思える。グループ最大のライバルとなるのは、ユーロ2008でもその堅守に苦しみ、PK戦の末に勝利したイタリアだ。

 しかしながら、チェーザレ・プランデッリ監督率いるイタリアの前評判は高くない。チームは10年W杯でグループリーグ敗退に終わった後に世代交代を余儀なくされ、一時代を築いた選手のほとんどが代表を去った。そのわずかな生き残りの中には、今季スクデット(セリエAのタイトル)を獲得したユベントスで、再び輝きを放ちはじめたアンドレア・ピルロがいる。

 イタリアは近年思うような結果を挙げていないだけでなく、大会直前になって再びセリエAの八百長問題が生じ、この件に関与した疑いをかけられたドメニコ・クリーシトが代表を離れることになった。そんな状況で先日迎えたロシアとのテストマッチでは0−3の完敗に終わっている。

 グループCにはさらに、どこへでもついてくる多数のファンを擁し、常に厳しい肉弾戦を強いてくるアイルランドがいる。同代表の守護神シェイ・ギブンやDFリチャード・ダンは、多くの負傷者を抱える状況にもかかわらず、「13試合も無敗を貫く自分たちが優勝できない理由はない」という驚くほど強気のコメントを発している。ルカ・モドリッチ、ニコ・クラニチャル、イバン・ラキティッチ、エドゥアルド・ダ・シウバらタレントを多数擁するクロアチアは、スペインほどレベルは高くないものの、ショートパスを多用したきめ細かなスタイルでプレーするチームだ。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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