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ベテラン遠藤が感じたザックジャパンの成長
3度目の最終予選、踏み出した大きな一歩

本田を生かす遠藤の効果

遠藤はオマーン戦の快勝を「早い時間帯に点を取れたのが一番大きかった」と分析。自身3度目の最終予選は好スタートを切ることに成功した
遠藤はオマーン戦の快勝を「早い時間帯に点を取れたのが一番大きかった」と分析。自身3度目の最終予選は好スタートを切ることに成功した【Getty Images】

 本田圭佑が前半12分に目の覚めるような左足ボレーで先制し、1−0で折り返すと、日本は後半開始10分足らずの間に、前田遼一と岡崎慎司が立て続けにゴールを奪った。特に後半9分の3点目は、オマーンを戦意喪失させるのに十分な効果があった。香川真司と長友佑都が絡んで左サイドで仕掛け、いったん下がってボールを受けた遠藤保仁が再び香川に配球。前田遼一へとつながり、左足シュートがDFに当たる。そのこぼれ球を岡崎が強引に押し込む形だった。


 この得点シーンに象徴されるように、オマーン戦の遠藤は、中盤で攻守のバランスをしっかりと保ち、攻撃陣が押し上げた時に確実にサポートに入って2次攻撃、3次攻撃の起点になっていた。得点に直接絡む仕事こそ見られなかったものの、日本歴代2位の川口能活に並ぶ国際Aマッチ116試合出場を記録した経験豊富な選手らしい「安定感」を随所に示した。


 トップ下の本田がよりゴールに近い場所でプレーできたのも、遠藤が中盤でどっしりと構えていた効果と言える。5月23日のアゼルバイジャン戦ではボランチの構成力が不足気味で、本田が下がってゲームメークに参加せざるを得ない状況が多々あっただけに、やはり遠藤がいると全く違うようだ。


「ヤットさんがいると自分が高い位置を取れる。お互い分かり合ってますからね」と本田が言えば、遠藤も「圭佑は全部できる選手。真ん中でタメを作ってくれるし、2列目、3列目が上がっていきやすくなる。ハセ(長谷部誠)を含めて真ん中の3人はバランスさえ保てれば、流動的に動いても何の問題もない。今回はある程度、うまくやれました」と本田が加わったトライアングルの絶妙な関係を前向きにとらえていた。


 こうしたプラス要素もあって、日本は2014年ブラジル・ワールドカップ(W杯)出場権獲得へ極めて順調な一歩を踏み出した。振り返ってみると、06年W杯ドイツ大会の最終予選初戦・北朝鮮戦では、大黒将志のロスタイム弾で何とか逃げ切り、10年W杯・南アフリカ大会の同初戦も勝利したものの、バーレーンに終盤2点を追い上げられ、冷や汗をかいている。


 寿命が縮まりそうなギリギリの戦いを代表の一員として実体験してきた遠藤は、今のチームの成長を少なからず感じているようだ。

「早い時間帯に点を取れたのが一番大きかったですね。南アの最終予選初戦だったバーレーン戦(08年9月)以外はギリギリの時間帯に何とか点を取る形だった。でも今回は前半をリードして折り返せた。それが落ち着いてゲームを運べた一番の要因だと思いますね。試合までの準備期間も1週間くらいあって、海外組もいいコンディションで臨めたし、欧州のハイレベルな舞台でプレーしている選手も増えた。相手にとっては脅威になる選手が多ければ多いほど嫌だと思う。そういう要素が重なって、いいゲームができたのかなと思いますけど」と、3−0で快勝したオマーン戦をあらためて分析。ベテランボランチの口ぶりには余裕が感じられた。

最終予選前には不安視する声も

 とはいえ、今季の遠藤は順風満帆というわけにはいかなかった。所属するガンバ大阪が予想外の低迷を強いられているからだ。10年間チームを率いた西野朗監督(現ヴィッセル神戸)が去り、後を引き継いだセホーン監督の下ではまるで結果が出ず、公式戦わずか5戦で指揮官解任という前代未聞の事態に発展した。その後、生え抜きの松波正信監督が就任したものの、浮上のきっかけを思うようにつかめず、AFCチャンピオンズリーグは予選リーグで早々と敗退。J1も第13節終了時点でJ2降格圏の16位に沈んだままだ。


「ガンバの成績が悪いのはしょうがないですけど、僕自身はチームでもいっぱいボールに触れているし、コンディションが悪いとも全然思っていないんで。至って普通だと思いますけど」と遠藤自身は気丈な発言をしていたが、最終予選前には「遠藤と今野泰幸は大丈夫か?」と不安視する声も上がった。


 右内転筋を痛めて昨年8月からFKやCKの封印していた影響からか、今季は最大の武器であるキックの迫力や精度を微妙に欠いていたことも、周囲の懸念を増大させる一因になっていた。

「リスタートの感覚が鈍った? それは特にないです。いいボールを蹴ることだけに集中しています。止まっているボールは蹴れば蹴るほど精度が上がっていくんで、徐々に上がってきた感じはありますけど」と普段通りの飄々(ひょうひょう)とした物言いで雑音を一蹴。自然体でオマーン戦に臨もうとしていた。

元川悦子
元川悦子

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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