交流戦最下位、ドン底に転落したソフトバンク

田尻耕太郎

交流戦最下位と低迷するチームと連動するように、不調に陥っている内川 【写真は共同】

 ドン底だ。福岡ソフトバンクホークスは3日のヤクルト戦に敗れて6連敗を喫し、ついに交流戦最下位に転落した。12球団最多の過去3度の優勝を誇る交流戦での大失速。昨年に続く連覇は絶望的。それどころかパ・リーグ3連覇にさえ、早くも暗雲が立ち込めている。ここまで52試合を消化して22勝26敗4分の4位。5月以降では、Bクラスも借金生活も3年ぶりだ。

「ヒットマン」内川、ついに打率3割を割る

 このようなチーム状況で調子の良い選手など見当たるわけもない。とりわけ気がかりなのが内川聖一である。

 もともと今回の『鷹詞〜たかことば』では「調子が悪いと自認しながらも、今シーズンも打率3割を打ち続ける内川のスゴさ」をテーマにするつもりだった。昨季、史上2人目の両リーグ首位打者を獲得したヒットマンは今季も開幕からヒットを量産。なかでも4月21日の楽天戦(鹿児島・鴨池)では5打数5安打の離れ業を見せるなど、交流戦前の5月13日までの打率は3割2分4厘を残していた。しかし、今シーズンはずっと表情がさえない。時折、いら立ちを隠さないこともある。

「打率は高い方が良いに決まっています。だけど、自分に対して、おもしろくない。僕は全部ちゃんと打ちたいんです」
 内川の打撃について、藤井康雄打撃コーチは「確かに状態は良くないと思います。打撃フォームの中でいえば、トップの位置が決まっていない」と解説してくれた。それでもヒットを量産できるのが内川のすごみだが、彼自身はそれが気に入らない。

「調子が悪くても打率は残っている。さっきも言ったように悪いことではありませんが、それが逆に復調を邪魔しているようにも感じるんです」
 唇をかむ表情からは、出口が見えない深刻さをうかがい知ることができた。そして悪い予感は、交流戦で的中してしまう。ここまで交流戦14試合での打率は2割2分8厘と急下降。3日のヤクルト戦は4打数ノーヒットに終わり、ついに今シーズン打率が3割を割ってしまった(4日現在の打率2割9分8厘)。

「個」の力から「チーム力」の結集へ

 内川と比例するようにチームも転がり落ちたのだが、低迷は決して彼だけの責任ではない。
 先述の3日には残念に思えるシーンもあった。この日はデーゲーム。前日はナイターだったにもかかわらず、若手5選手が早出特打に汗を流していた。素晴らしいことである。しかし、それぞれ黙ってバットを振るだけ。打撃ケージから出てくる姿はうつむき加減で、覇気が全く伝わってこないのだ。選手同士で打撃理論を交わす姿もない。数十分の間、乾いた打球音と打撃投手を務める立花義家打撃コーチが投げる際に発する「ムン」といううめき声だけが、広いヤフードームに響き続けた。

 チームの雰囲気が悪すぎる。昨年から主力がごっそり抜けたソフトバンクは、「個」の力で勝てるチームではなくなった。だからこそ、「チーム」として戦うムードがなければ、今後の巻き返しも苦しくなる。
 若手がこのありようでは、現状ではムードメーカーも内川に頼らざるを得ない。自身の調子が上がらない中で求めるのも酷な話だが、昨年は「僕のそういう部分も評価してもらい、(ソフトバンクが)獲得してくれた」と、あえて派手なアクションで感情を表現してベンチを盛り上げた。

 5日からは本拠地ヤフードームに好調の巨人を迎える。初戦で対するは、昨季までの同僚・杉内俊哉。前回登板であわや完全試合のノーヒッター左腕は難敵に違いない。この逆境にどう立ち向かうか。ソフトバンクの今後の浮沈に関わる、重要な一戦となりそうだ。

<了>
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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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