日本に求められる「木村頼み」からの脱却=女子バレー
最終予選ならではのプレッシャー
日本は世界最終予選でアジア最上位の4位に滑り込み、ロンドン五輪出場権を手にした 【坂本清】
昨秋のワールドカップ(W杯)で3位以内に入り、ロンドン五輪の出場権を手にすることはかなわなかったが、世界最終予選(5月19〜27日)を前にバレーボール全日本女子の五輪出場そのものを危ぶむ声は至って少数だった。
それが、ふたを開けてみれば、全体の上位3位をのぞくアジアの1位、計4チームが出場権を手にする最終予選で、日本は4勝3敗の4位に終わった。
たとえ戦前の予想よりも苦戦を強いられたとしても、3大会連続となる五輪出場が決まったのだから素直に喜べばいい。
そう思いつつも、後味が悪いのはなぜか。
「最終予選は他の大会とは違い、与えられるものではなく、自分たちでつかみにいかなければならないもの。プレッシャーを感じながらの戦いでしたし、このプレッシャーを感じながら負けてしまうのは、すごく心に残る。それだけは避けたいという思いでした」
チーム内で最も豊富なキャリアを持つ竹下佳江(JT)がそう言うように、最終決戦を勝ち抜く過程で生じるプレッシャーの度合いは計り知れない。同じ国際大会とはいえ、世界選手権やW杯と同じパフォーマンスを展開しろ、と望むのは選手にとって酷なこととも言える。
おそらくこれが、「五輪に出ること」を目標としたチームであれば、たとえセルビア相手にフルセット負けという、何ともスッキリしない大会の幕切れであっても、どんな形であれ、出場権を得たことを手放しで喜ぶだろう。
されど、全日本女子の目標は「出ること」ではない。真鍋政義監督以下、選手たちも「ロンドン五輪でのメダル獲得」を目標として公言してきたはずだ。
真鍋監督は大会後、「“1位通過”を使命と選手たちに言い続けてきたことが、逆にプレッシャーを与えてしまった」と反省の弁を述べた。だが、もしも本当にそれがプレッシャーになるレベルならば、五輪という世界最高峰のチームが集う戦いで、力を発揮できるはずがない。
すべてが完璧に運ぶわけではないと思いつつ、期待が高まれば高まるほど、気になる点ばかりがやたらと目立って注文をつけたくなる。五輪出場が決まったにもかかわらず、どこかスッキリしないのは、最終予選で見つかった課題が、予想以上に多かったせいかもしれない。
あらわになった日本の問題点
韓国戦では木村、江畑、山口(左)がマークされ、打開策が見いだせなかった 【坂本清】
今大会で日本が黒星を喫した3試合のそれぞれに、敗因がある。
たとえば1−3で敗れた韓国戦、山口舞(岡山)は「木村(沙織=東レ)、江畑(幸子=日立)の両エースはもちろん、(自身の)センターに切り込む攻撃に対しても常にマークがあった」と振り返る。
2008年のアジアカップ以後、4年近くの間、勝ち続けてきた韓国に対して慢心があったわけではないだろう。だが、韓国が敷いた日本対策は、サーブで攻めて相手の攻撃のポイントを絞り、ブロックで仕留める。至ってシンプルでお手本通りの策であり、奇襲を仕掛けられたわけではない。
得点能力の高い木村や江畑をマークするのは当然であるが、真鍋監督から「ミスの少ない選手」として信頼を寄せられる山口に対しても、「ここを生かされたら厳しい」と対策を練るのは当然のことだろう。
日本の問題は、木村の攻撃が通らない、江畑が封じられる、山口が生かされない。こうした状況になったときに、開けるべき、次の引き出しの数が限られていたことではないか。
銅メダルを懸けた10年世界選手権での米国戦、さらには11年W杯でのブラジル戦、最終日の米国戦。これぞ大一番という一戦で、常に攻撃の中心となり、1人で幾つもの引き出しを開け、チームをけん引してきたのが木村だ。
サーブの標的になりながらもレシーブを返し、攻撃で得点を量産する。どのチームにも“点取り屋”と呼ばれる攻撃の軸となる選手はいるが、北京五輪以降、江畑や迫田さおり(東レ)といった攻撃型の選手が頭角を現す一方で、攻守両面で軸となる木村にかかる負担は増すばかりだった。