ウェバーvs.ベッテルの“目に見えない攻防戦”=F1=可夢偉は不運なアクシデントでリタイア
縦軸はラップタイム(1分18〜22秒の部分を表示)、横軸は周回数。レース中盤はウェバーとベッテルの“目に見えない攻防戦”が繰り広げられた 【吉田知弘】
コース幅が非常に狭く、ほとんどが低速コーナーで構成されているモンテカルロ市街地コース。そのため前のマシンを追い抜くシーンがほとんどなく、今回も先頭からスタートしたウェバーが終始有利な展開でリードした。一見単調なレースに見えたファンも多かったかもしれないが、9番手からスタートしたセバスチャン・ベッテル(レッドブル)は、そんな単調な勝ち方ではなく“最初から狙ったモナコでの逆転勝利”の戦略を選んでいた。今回は、現王者が描いていた逆転のシナリオについて細かく見ていく。
ベッテルが描いていた“逆転のシナリオ”
普通なら、追い抜きができないモナコで9番手スタートは、ほぼチャンスがないに等しいが、ポールポジションのウェバーをはじめとした上位陣はスーパーソフトタイヤを装着してのスタート。消耗が早く、レース前半で最初のタイヤ交換を強いられる可能性が高く、場合によっては2回ストップになることも予想された。
そこでベッテルの考えた“逆転のシナリオ”はこうだった。スタート直後は満タンで、スーパーソフトでも各車ペースが上がらない。そうしたライバルをしっかり追いかけながらタイヤを温存。上位陣が前半でタイヤ交換をしている間にトップに浮上し、前方がクリアになったところでペースアップする。自分のタイヤ交換までにピット作業の所要時間(約26秒)を稼げれば、最終的に前方にいた全員を逆転することができるという戦略だった。もし26秒のリードを築けなくても、相手が2回ストップすれば、レース序盤で大きく引き離されない限り、1回ストップ作戦のベッテルが有利になる。
スタートからトップで逃げ切る「正攻法」のウェバーに対し、後方から巧みなレース戦略で逆転を狙う「奇襲作戦」を選んだベッテル。レース中盤は、この2人による“目に見えない攻防戦”が繰り広げられていた。