自己最高タイの5位入賞、復活した可夢偉=F1 プラスの要素がかみ合い3度目のポイント獲得

吉田知弘

自己最高タイとなる5位入賞を果たした可夢偉。復調の要因はムジェロテストとフリー走行にあった 【Getty Images】

 F1第5戦スペインGP、日本の小林可夢偉(ザウバー)は予選で最終セッションのQ3進出権を獲得するも、油圧系トラブルによりQ3では出走できず、9位からのスタートとなった。肝心なところでのトラブル発生で、またしても運に見放されたかと思われたが、スタートで大きなミスもなく徐々に順位を上げていくと、60周目にニコ・ロズベルグ(メルセデスAMG)を抜き5位に浮上。前回のバーレーンGPでの不調がうそだったかのような快走で、自己最高タイの5位でフィニッシュし、今季3度目のポイント獲得となった。

復調の要因はムジェロテストとフリー走行

 近年のF1では、コスト削減を目的にシーズン中のテスト走行は禁止とされてきた。しかし、今年は5月1日から3日にかけてイタリア・ムジェロサーキットで公式合同テストが開催され、これが復調のきっかけとなった。

 シーズンが始まって修正をしたい個所が出てきたとしても、今まではテスト走行ができなかったため、大幅にマシンを復調させていく事は難しかった。特にトップチームほどデータや技術力が豊富ではないザウバーチームにとっては、シーズン中の方向転換は至難の業だ。そのためムジェロ合同テストは、可夢偉とザウバーチームにとって再び流れを呼び込む絶好の機会となったに違いない。

 さらに今回、決勝レースで安定した速さを維持できたポイントはもう一つある。それは「フリー走行からの取り組み」だった。

 今回の舞台、スペイン・カタルーニャサーキットは中・高速域のコーナーが多く、タイヤに大きな負担を与えるサーキットとして各チームが警戒していた。実際に決勝レースでもほぼ全員がタイヤ交換を3回、セバスチャン・ベッテル(レッドブル)は4回交換している。

「レース中にどれだけタイヤのパフォーマンスを維持できるのか」。フリー走行からレースを想定したロングラン走行を繰り返し、データを収集。またカタルーニャサーキットとザウバーマシンは相性も良く、プレシーズンテストでもトップタイムを記録している。こういったプラス要素がすべてかみ合い、レースでの快進撃が実現した。

 これまで、決勝でのロングラン作戦を選択し続けてきた可夢偉とザウバーチーム。しかし、今年のピレリタイヤを100パーセント使いこなす事ができず、戦略が裏目に出て厳しいレースが続いてしまったが、チームと可夢偉が一貫して取り組んできたことが今回“結果”となって現れた。

 次回の第6戦モナコGPは、昨年5位入賞を果たしたモンテカルロ市街地コース。伝統の市街地レースで、調子を取り戻し始めた可夢偉の活躍が楽しみだ。

<了>
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著者プロフィール

1984年生まれ。幼少の頃から父の影響でF1に興味を持ち、モータースポーツの魅力を1人でも多くの人に伝えるべく、大学卒業後から本格的に取材・執筆を開始。現在では国内のSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に年間20戦以上を現地で取材し、主にWebメディアにニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載。日本モータースポーツ記者会会員

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