福島擁する女子400メートルリレー、五輪決勝へ必要な個の力=陸上

高野祐太

天候にも左右され、目的果たせず

女子400メートルリレーで五輪出場を狙う福島(右)と市川 【写真:築田純/アフロスポーツ】

 これも、産みの苦しみというものなのだろうか。長引く左足のケガに苦しんで来た北風沙織(北海道ハイテクAC)は、以前から好きな言葉に「神様は乗り越えられる者にしか困難を与えない」を挙げているが、今回もそういうことなのだろうか。

 ロンドン五輪で1964年東京大会以来48年ぶりとなる五輪出場を目指す女子400メートルリレーの日本代表チーム。種目を新設までした5月3日の静岡国際と昨年43秒39の日本新を出している6日のゴールデングランプリ川崎との国内2戦で持ちタイム更新に挑んだが、目的を果たせなかった。静岡は雨がちの低い気温の中で43秒79。川崎にいたっては広告ボードが倒れるほどの強風が吹き荒れていた。タイムは44秒29。屋外で行う陸上競技で天候を言い訳にすることはできないが、記録更新のためには条件が悪過ぎた。

 リレー種目のロンドン五輪出場資格は、7月2日までに出した2レース平均タイムの上位16カ国に与えられる。日本代表女子400メートルリレーチームは、日本記録の43秒39と昨年5月に中国で行われたアジアグランプリの43秒65が持ちタイムで世界の11位に付ける。

目指す場所は五輪決勝の舞台

 だが、北京五輪のときからルールが変更され、これまで国際陸連が認めていなかった大会でも3カ国が集まれば、記録がランキングに反映されることになった。このルール緩和を活用すれば、地理的に近いヨーロッパなどで16位周辺の国が駆け込みで記録を上げてくる可能性が高まる。日本は安全圏にいるとは言えず、状況打開のために臨んだ今回の挑戦だった。現在は五輪前のレースにはもう出場しない方針だが、この結果を受け、麻場一徳女子短距離部長によると、他国の状況を見ながら6月上旬の日本選手権後、7月2日までの間に再度挑戦することも検討するという。

 こうして、ロンドン五輪出場を確実にできないまま6月の日本選手権(大阪)を迎える日本チームだが、世界選手権で惨敗した昨年夏ごろよりは戦力が向上した様子がうかがえる。記録を評価しにくい5月の2戦だったが、中国やオーストラリアを抑えて優勝した点は状態が上向いている証ととらえられる。条件さえ整えば、少なくともセカンドベスト記録の43秒65は突破できていた可能性がある。

 何しろ、福島というエースの登場以降、歴史が動き始めている女子短距離陣の目指すところは、五輪出場ではなく五輪の決勝進出なのだ。昨年の世界選手権を見る限り、決勝進出のためには42秒台の力が必要な時代になってきているが、北風、高橋萌木子(富士通)、福島、市川華菜(中京大)の日本記録メンバーのベストパフォーマンスを足し合わせた分析では42秒85が可能という。昨季から本格導入しているアンダーハンドパスも、20メートルあるバトンゾーンの目標通過タイム2.15秒をおおむね達成できるようになっているという。

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著者プロフィール

1969年北海道生まれ。業界紙記者などを経てフリーライター。ノンジャンルのテーマに当たっている。スポーツでは陸上競技やテニスなど一般スポーツを中心に取材し、五輪は北京大会から。著書に、『カーリングガールズ―2010年バンクーバーへ、新生チーム青森の第一歩―』(エムジーコーポレーション)、『〈10秒00の壁〉を破れ!陸上男子100m 若きアスリートたちの挑戦(世の中への扉)』(講談社)。

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