体操男子、2大会ぶりの団体金へ 内村ら五輪代表が持つ可能性

矢内由美子

田中兄弟、山室らもメダルの期待

きょうだいそろって五輪出場を決めた田中家。兄の和仁(右)、弟の佑典(左)も健闘を誓う 【坂本清】

 日本チームとしては、まず最初の種目であるゆかで、内村と加藤が高得点を出して中国より上にいき、ライバルにプレッシャーを掛ける。2番目のあん馬と3番目のつり輪で確実な演技を見せ、4番目の跳馬と5番目の平行棒で首位を守る。そして最後の鉄棒では、最終演技者の内村が確実に技をこなし、金メダルの舞を見せる。そのようなシミュレーションを考えているはずだ。高得点の期待が寄せられるのは、ゆかの内村、加藤だけではない。つり輪の山室、平行棒の田中和、鉄棒の田中佑にも期待が掛かる。

 妹の理恵、弟の佑典と一緒にきょうだい3人がそろってロンドン五輪に出場することが決まった田中和は「4年前の選考会で悔しい思いをしたので、今回しっかり成績が出たというのは自分の中でうれしい。でも、ここをゴールではなく通過点として、きょうだい3人で五輪で活躍するということ目標に頑張りたい」と言う。

 弟の佑典はNHK杯でミスを連発し、「メンタルが弱いです」と泣き笑いの代表滑り込みだったが、「五輪で思い出すのはアテネのとき。今回は試合前にアテネの映像を見て奮い立たせてきたのだけど、いつ見ても感動するし、鳥肌が立つ。ああいう記憶に残る試合をしたい」と誓った。

 全日本選手権ではまさかの7位に終わっていた山室には、昨年の世界選手権個人総合銅メダリストという自尊心がある。NHK杯2日目には91.550の高得点を出して実力を見せた。「ロンドンでは団体金メダルをどうしても取りたい。日本人らしい、きれいな、着地までしっかり止めにいく美しい演技ができるように、これからしっかり練習していきたい」と前を見据えた。

 最年少の加藤は北京五輪の際の内村に似ている。ゆかが得意であること、ひねりが速いこと、着地がうまいこと、大学生であること。そして、五輪前に世界選手権に出たことがないということだ。ロンドン五輪までは残り3カ月を切っているが、加藤自身が「一番若いので、チームを勢いづけたい」と語るように、また、北京五輪のときの内村が選考会後の代表合宿で目覚ましい成長を遂げたように、少ない準備期間でも一気に伸びていく可能性はある。

 団体総合以外では、内村の個人総合は金メダルが確実視されており、同じく内村は種目別ゆか、鉄棒も金メダル候補。そのほか、平行棒では内村と田中和にメダルの期待がかかる。そして、山室はつり輪、跳馬で表彰台を狙える実力がある。

 選手たちはこの後、5月と6月に強化合宿を行い、7月のフランス遠征で時差調整をし、本番に備える。

 悲願の金メダルへ――、機は熟してきた。

<了>

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著者プロフィール

北海道生まれ。北海道大卒業後にスポーツニッポン新聞社に入社し、五輪、サッカーなどを担当。06年に退社し、以後フリーランスとして活動。Jリーグ浦和レッズオフィシャルメディア『REDS TOMORROW』編集長を務める。近著に『ザック・ジャパンの流儀』(学研新書)

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